2021 Fiscal Year Research-status Report
Large-scale X-ray fluorescence analysis on plant specimens and construction of information base on element accumulation of plants
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20K05765
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
水野 隆文 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50346003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
橋本 篤 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (40242937)
村井 良徳 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (30581847)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蛍光X線分析 / 植物標本 / XRF / リン / イオウ / 黒ボク土 / 野生植物 / 植物栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(2020年)にXRFによる測定方法を確立し,さらに博物館,植物園および大学など植物標本を所有する学術機関と連携し,標本の貸与に関するルールを作成した。そのうえで2021年度は新たに高知県立牧野植物園,東北大学附属植物園,国立科学博物館,岡山大学資源植物科学研究所と連携し,XRFによる元素濃度のデータ収集し,日本の野生植物に関する植物栄養学知見の獲得を進めた。 特に2021年度は日本の国土の30%を占める代表的な土壌型である黒ボク土地帯と,それ以外の地域に分布する野生植物について,イオウとリンの集積レベルに関する解析を実施した。自作標本を含む1,322点の植物標本について解析した結果,次の様な結果を得た。①火山周辺の黒ボク土に分布する野生植物は,非火山灰土壌の植物と比べ統計的に有意にイオウが高く,また健全な生育に必要とされる乾燥重量あたりの濃度(0.1%)を下回った比率は標本全体で17%程度となり,日本の野生植物は火山から供給により十分なイオウ濃度を維持していることが判明した。②黒ボク土では植物のリン吸収が抑制されることが広く知られているが,植物標本の解析結果からは土壌タイプの違いによる集積量の差は認められず,一方でいずれの土壌においても全体の三分の二が健全な生育に必要なリン濃度(0.2%)を下回っていた。よって,リンについては火山灰土壌か否かではなく,土壌に含まれるリン吸着性を有する粘土鉱物(アロフェン)の含有率で比較すべきであることが示唆された。それ以外にも③イオウとリンいずれも木本植物より草本植物での集積量が有意に高い,④植物の科のなかでユリ科の植物に高いイオウ集積性が確認された。⑤植物のイオウとリンの集積量には正の相関が認められる。などのことが新たに確認されるなど,植物のイオウとリンの集積に関する重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請書では,令和3年度はICPによる制度検証と元素測定を中心に行い,データ解析については後半に行う予定であったが,実際にはICPによる濃度検証および標本の水分含有量解析などデータベース構築に必要な予備試験はほぼ実施され,特定のテーマ(火山灰土壌におけるイオウおよびリンの集積量,およびアルカリ土壌における鉄・亜鉛等の集積レベル)など,令和4年度以降に実施予定であった課題について解析を終了することができた。これらの成果についてはすでに論文を執筆中であり,早い段階で情報公開ができると考えている。また標本の測定だけではなく,令和4年度以降に予定していた実際の野生植物における解析データの再現性についても検証を実施し,静岡,山梨,長野,岐阜,北海道各県の火山灰土壌の草本および木本植物(クローバー,ヨモギ,ソメイヨシノ)と,三重,岐阜,滋賀,福井および北海道の非火山灰土壌の動植物との比較を実施した。その結果,黒ボク土土壌地帯における高いイオウ集積性についてデータの再現性が認められ,標本を用いて解析した植物栄養学的知見が実際の野生植物に適応しうることを証明することができた。このように多方面にわたり植物栄養学上の重要な情報を獲得できたことからも,本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
4年間で実施する本科研費研究は2022年度に残り2年となる。本課題研究の最大の目的である,なるべく多数の,様々な植物種からの元素集積データベースを収集することを継続することが今後の研究推進の中心となる。これまで標本貸与が難しかった三重県立総合博物館の協力を得ることで幅広い植物種を入手するほか,新たな解析課題として,「日本におけるウコギ科植物の各種重金属集積性の傾向調査」および「コシアブラに続く新規Mn超集積性植物の発見」を実施する。ウコギ科についてはコシアブラのMnおよび放射性セシウム,タカノツメのカドミウム集積など特徴的な金属集積性を有する種が含まれており,これらの種を含むウコギ科植物全般のデータを収集し,その超集積性の原因を解明する。また2021年度までに行った調査において,コシアブラ以外の植物種に高いマンガン集積性が認められ,その一部が超集積性植物の標準濃度である1%を超えていた。これを踏まえ,この植物種がマンガン超集積性を有するか否か,その集積性もコシアブラで見られた特性である低カルシウム濃度を示すかについて検証し,植物におけるMn超集積性の原因を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)国際学会(国際蛇紋岩植生学会)への参加を予定していたが,コロナのため開催されなかったため,その分の旅費を繰り越した。 (使用計画)海外での学会発表に変わり,2022年7月に金沢で開催される国際学会(The 8th International Symposium on Metallomics)への参加費,研究発表費として使用する。また2021年度に得られた研究成果を予定を前倒しして論文発表するため,論文掲載料として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)