2020 Fiscal Year Research-status Report
植物細胞中の構造を維持した未変性ペクチンの抽出と構造に基づく機能の解明
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20K06175
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
熊谷 明夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (30747837)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペクチン / 柑橘 / 植物細胞壁 / セルロースナノファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、植物組織内におけるペクチンが本質的に示す構造的特徴と物性、その相関から植物組織内におけるペクチンの機能を解明することである。この目的を達成するための第一の課題として、申請者らが開発した技術で製造した未変性のペクチンが特異な分子間互作用で結合した柑橘由来のセルロースナノファイバー(CNF)から、未変性のペクチンを分離・単離する方法を見出すことを掲げた。この未変性ペクチンを研究対象に用いることで、植物組織内におけるペクチン本来の機能を明らかにすることができる。 そこで初年度は、申請者らが製造に成功した柑橘由来CNFから未変性のペクチンを分離・単離するため、柑橘由来CNFのセルロースを選択的に除去する目的でセルロース分解酵素の組成、反応条件を検討した。その結果、ペクチン分解物の生成を抑え、セルロース成分が残存しない酵素分解物、すなわち変性が抑えられたペクチンを取得する条件を見出した。 次いで、この変性を抑えたペクチンと、従来の酸、キレート剤を用いて抽出したペクチンとの物性の違いを評価した。植物細胞壁中に存在する水溶性多糖の中でもペクチンは特に複雑な構造であると推定されているが、従来の抽出方法では大きな構造変化を伴うため、植物組織内で存在している状態を維持していない。実際に本研究で分離・単離した新規のペクチンは、従来法で抽出したペクチンに比べて、粘度、pH安定性、耐塩性等が高くなるとの結果が得られ、変性が抑えられたペクチンであることが示された。 次年度からは、この変性を抑えたペクチンの化学組成、構造解析、形態評価を行い、その構造的特徴と、その構造的特徴がもたらす物性について明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で初年度掲げた主な課題は、申請者らが製造に成功した未変性のペクチンが特異な分子間互作用で結合したCNFから未変性のペクチンを分離・単離する方法を探索し、その物性を評価することであった。 本計画に則り、柑橘由来CNFに対してセルロース酵素の処理条件を検討することで、従来とは異なるペクチンの生成条件を見出した。さらに物性評価から従来法で得られるペクチンと比べて変性が抑えられていることを示すことができた。 このように初年度の主な課題である新規ペクチンの単離と物性評価を達成したことから、本研究は研究計画に対して順調に進んでいると判断した。一方で、初年度の末から次年度に掛けて、新規ペクチンの構造的特徴の解析を実施する予定であったが、まだ十分な解析結果が得られておらず、論文等にまとめるまでの成果に達していない。 以上のことから、進捗状況は「おおむね順調に進んでいる」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね計画通りに進行しているため、当初の研究計画通り、次年度の第一の課題は、新規に得られたペクチンの構造的特徴を明らかにすることである。具体的には、分子量測定、化学組成分析として全糖量およびウロン酸量、構成糖やエステル化度を調べ、従来の抽出方法で得られるペクチンとの違いから、変性が抑えられたペクチン特有の構造を明らかにすることで、植物組織内におけるペクチンが本質的に示す構造的特徴を見出す。この構造解析では、原子間力顕微鏡観察による形態観察のほか、核磁気共鳴や赤外分光、質量分析などを用いた精密解析についても検討する。そして、新規ペクチンの分離・単離方法から構造的特徴までをまとめて、論文等の成果物とすることを目指す。 合わせて、柑橘由来CNFおよび新規ペクチンの構造的特徴が示す物性との相関関係を調べ、ペクチンの機能として考えられている植物細胞間の接着に寄与する構造的特徴など、植物組織内におけるペクチンの機能と、その機能をもたらす構造の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
計画時に参加予定であった学会が社会情勢の影響で中止となったため、学会参加のための旅費として計上していた予算を執行するに至らなかったため。 また、学会参加費、論文の校正・投稿費として計上していたその他の予算についても、学会に参加できなかったことに加え、本年度の成果では論文執筆に至る成果が得られなかったため。 予算執行に至らず、生じた次年度使用額については、次年度以降の研究計画で実施予定の構造解析で必要となる消耗品が高価なものが多いことから、物品費に充てて使用する計画である。
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