2021 Fiscal Year Research-status Report
Revaluation of Suburban agriculture Seen from the Continuities of Ie(Household) and Mura(community)
Project/Area Number |
20K06284
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
玉 真之介 帝京大学, 経済学部, 教授 (20183072)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 直史 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (50649473)
平野 哲也 常磐大学, 人間科学部, 教授 (50735347)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | イエとムラ / 基層構造 / 都市近郊農村 / 農地改革 / 家族経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度も前年度に引き続き新型コロナの蔓延が続き、当初に予定していた研究会の開催は見送らざるを得なかった。ただし、感染者の減少の時期を見計らって、徳島県での短期的な調査を数回実施したと共に、前年と同様に文献収集に力を入れ、文献の解析によって、本研究のテーマとなる「イエとムラの連続性」に対する歴史的な考察を行って、重要な成果をまとめることが出来た。 その第1は、明治維新期の地租改正という制度変革における「イエとムラ」について、これまで等閑にされてきた「国際的契機」という観点から考察である。それにより、明治政府が「主権国家」システムへの参入のために「租税国家」の確立を急いだ契機としての台湾出兵の意義を明らかにし、それが既存の秩序である「イエとムラ」への依存と妥協を不可避としたという仮説を提示した。今後の実証研究への重要な示唆である。 第2は、昨年度から継続している農地改革の歴史的性格についてである。本年度は、これまでの研究が前提として来たマッカーサーによる意欲的な関与という見方を根本的に覆し、マッカーサーが最も重視していたのは天皇の権威を守るための憲法改正であり、農地改革はそれへのソ連の干渉を排除するための戦術的な道具にされたという全く新たな説を、「なぜマッカーサーは農地改革を対日理事会に付議したのか」という問いから実証的に解明した。 第3は、以上の地租改正及び農地改革に対する考察を踏まえて、戦後歴史学が提示してきた”農業は土地制度の変革を通して段階的に発展する”という歴史像に代わる新たな歴史像を著書として刊行した。そのエッセンスは、”日本農業は「イエとムラ」というDNAを保存しつつ時代の変化に適応して進化していく”というものであり、本研究のテーマである「イエとムラの連続性」という観点に立った新たな歴史像の提示である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度と同様に、新型コロナの度重なる流行のため、当初の計画であった外部講師を招聘しての研究会開催が今年度も開催できなかったため、当初計画との対比するならば、進捗状況は「やや遅れている」とならざるをえない。 ただし、昨年度より当初計画に囚われることなく、文献収集を基本として文献の解析による本研究テーマの追究に研究の方向を切り替えることで、内容的には満足できる成果が得られている。 研究者を招聘しての研究会については、最終年度の来年度に持ち越して、2年間の研究の成果に対する検討会として実施したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度は、研究のとりまとめとして、農地改革に関する2年間の研究を「農地改革の真実-地主側からの再検討-」と題した著書にまとめることに最重点を置く。 それと合わせて、「イエとムラの連続性」の観点から、1920年代における小作争議や農民運動に関する研究史の総括と、とりわけこれまで指摘されながら研究されてこなかった小作争議の思想的、政治的研究に取り組む。 また、研究費に余裕があることと、新型コロナの感染が治まりつつあることを踏まえて、研究分担者と共に徳島県と栃木県における農村調査を実施して、「イエとムラの連続性」を実証的に検証することに取り組む。 また、研究者を招聘しての研究会を実施して、2年間の研究成果について他の研究者から見た批判的な検討を行い、今後の課題を明確にすることにも取り組みたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナの継続的な感染拡大により、当初予定した研究者を招聘しての研究会開催が2年続けて実施不能となったのに加えて、当初予定した分析対象地の実地調査も部分的にしか実施できなかったため人件費と旅費に次年度使用額が生じた。 来年度は、新型コロナ感染が治まることも見込まれることから、持ち越した額を活用して研究会及び調査を精力的に実施する。
|
Research Products
(8 results)