2023 Fiscal Year Research-status Report
モンゴル、ムルンにおけるフルボ酸を活用した緑化技術の開発とその評価
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20K06294
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
寺崎 寛章 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (40608113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 一成 聖路加国際大学, 専門職大学院公衆衛生学研究科(公衆衛生大学院), 准教授 (50596278)
梅村 朋弘 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10401960)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | モンゴル / 砂漠化進行防止 / 緑化 / フルボ酸 / 羊毛植生シート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では砂漠化が進行しているモンゴル北部ムルンを対象として、ムルンの現況調査を行うとともに、バイオスティミュラントの1つであるフルボ酸や現地の羊毛を活用した緑化技術を開発し、その効果を確かめることを目的とする。 新型コロナウイルスの影響により、当初は研究を殆ど進めることができず、大幅な研究計画の変更や研究実施体制を見直す必要が生じた。その後、2021年度は渡航できず、研究協力者も次々に新型コロナウイルスに罹患し、実験は中止せざるをえなかった。2022年度は再度、信頼できるカウンターパートや研究協力者と協議を行い、海外渡航できないながらも、予備試験を行った。その結果、フルボ酸含有肥料を散布した区画では僅かではあるものの、生育は良好であった。なお、同時に緑化促進が期待できる技術として、マクロポアや廃棄羊毛を用いた実験を行った結果、良好な生育が観られた。 これまでの研究結果を踏まえて、2023年度はフブスグル県の関係機関や現地の遊牧民の協力の下、実際の草原地帯で植生試験を6月に実施した。試験ではまず家畜が入らないように周囲に柵を巡らし、区画を整理した。その後、フルボ酸含有肥料を散布した区画(散布区)と対象区(非散布)の2区画を設け、イネ科やマメ科の植物種子を播種した。なお、種子の選定ならびに散布量などはモンゴルの既往の研究を参考に決定した。また羊毛シートを敷設した区画でも同様の実験を行い、6月の試験開始から降雪前の9月までの生育状況を調べた。その結果、9月時点では対象区よりも散布区の方で植物の生育は良好であったことが確認された。今後、越冬後の生育がより重要になると思われることから、引き続き調査を行い、2024年度の生育状況を確かめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、2020年度および2021年度はモンゴル全土でロックダウンや外出・入国規制があり、またモンゴル入国後も強制隔離措置がとられていた。そのため、研究の進捗は大幅に遅れてただけではなく、研究計画の大幅な変更を余儀なくされた。2022年度も本学では原則、海外渡航が禁止されており、研究代表者のモンゴルへの渡航はできず、活動には限界が生じた。研究協力者に遠隔で指示を出して研究を行ったが、研究を円滑に進めることは非常に難しく、トラブルが頻発した。加えて、本研究計画の都合上、現地で植物を使ったフィールド試験の種子散布時期は限られているため、散布できなければ、複数年に亘る経過観察はできず、これらの遅れを取り戻すことは容易ではなかった。そのため、研究継続が危ぶまれ、関係者と度々協議した。 新型コロナウイルスによる研究活動の制限が徐々に緩和された2023年度にはモンゴルへ渡航することができ、予備試験の結果を基に草原地帯で試験を行った。このように、研究計画当初の目標達成は非常に難しいものの、研究計画を大幅かつ柔軟に変更しながらも研究を継続している状況下にある。なお、進捗は遅いながらも、モンゴルにおける草原の回復に繋がる技術や有益な知見が得られつつあり、少しでも緑化技術の開発に繋がる知見を蓄積すべく尽力する。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の大幅な変更や規模縮小を行いながらも、2023年6月から野外試験を開始した。現在、継続して植生状況を調査すべく、2024年度の渡航計画ならびに調査計画を立案している。新型コロナウイルスの影響による研究の遅れを取り戻すことは容易ではないものの、2023年度末時点で現地の協力企業やモンゴル科学アカデミー、モンゴル国立大学の専門家からの協力を得つつ、研究を進めている。いずれの専門家とも良好なコミュニケーションは取れており、研究を推進するために綿密な協議を重ねている。なお、2023年度末の時点では新型コロナウイルスの影響はもとより、ロシアのウクライナへの侵攻の影響を受けており、研究資材や人件費も高騰している。これらの事案を勘案して、研究計画を柔軟に変更して、研究成果の蓄積に努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、複数年に亘って現地へ渡航できなかったことにより、使用額との差異が生じた。また植生状況の調査などは研究の性質上、複数年度にわたって評価せざるを得ないことも次年度に使用額が生じた理由の1つである。研究が延長したことで、現地渡航費や現地協力者への謝金、土壌分析費用や気象データの購入費などに充て、費用の適切な執行をするとともに、積極的な研究成果の公表に努める。
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