2021 Fiscal Year Research-status Report
液-液相分離によるオートファジー関連結合反応の制御機構
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20K06567
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤岡 優子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (80399964)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーの始動はプレオートファゴソーム構造体(PAS)が担っている。ユビキチン様タンパク質Atg8は、ユビキチン結合系に類似した酵素反応でリン脂質ホスファチジルエタノールアミン(PE)と可逆的に結合し、オートファジーの膜伸長に直接関わる重要な分子である。オートファジーの始動に際してAtg8はPASに移行するが、その意義についてはこれまでわかっていなかった。我々はPASが、近年注目を集めている液-液相分離状態の膜のないオルガネラ(液滴)であることを最近見出した。そして液滴は細胞内における特定の酵素反応の反応場として機能することが知られていることから、PASはAtg8-PE結合反応の反応場として機能するのではないかとの着想を得た。本研究は従来の研究では欠けていた液-液相分離の視点を新たに導入することで、細胞内におけるAtg8結合反応系の真の制御機構を理解し,オートファジーの膜動態解明の一助になることを目的とする。 本年度は、Atg1複合体 をin vitroで液-液相分離させることでAtg1複合体液滴(PAS液滴)を作製し、Atg8-PEの脱脂質化反応に与える影響を調べた。その結果、PAS液滴はAtg8-PE結合反応を促進すると同時に、脱脂質化酵素であるAtg4による脱脂質化反応を阻害することが明らかになった。これまではAtg4の活性制御機構の詳細は不明であったが、PAS液滴内部に濃縮されるか否かという局在によって制御されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精製したAtg1複合体 をin vitroで液-液相分離させることでAtg1複合体液滴を作製し、PAS液滴のモデルとして用いた。まず、Atg8-PEを形成するために必要な2つのユビキチン様結合系を構成するタンパク質群(Atg7、Atg3、Atg8、Atg10、Atg12-Atg5-Atg16複合体)を蛍光標識し、PAS液滴にそれぞれ添加し,共焦点レーザー顕微鏡を用いて液滴に対する各因子の局在および浸潤度を定量的に調べた。その結果、Atg8やAtg12-Atg5-Atg16複合体が速やかに液滴内に浸潤する一方で、当初の予想に反してそれ以外の因子は液滴内に浸潤しづらいことが明らかになった。この結果から、PAS液滴がAtg8脂質化反応の反応場として働くことが強く示唆された。そこで、結合系の因子群(PEとしてリポソームも含める)をATPと混合することで、Atg8-PE結合反応をin vitro再構成し、それに対するPAS液滴添加の影響を解析した。その結果、PAS液滴存在下で、Atg8-PE形成が促進されることが明らかとなった。 一方、Atg8結合系によって形成させる脂質化Atg8は、細胞膜などのPASではない場所で形成されると、Atg4という脱脂質化酵素によって速やかに脱脂質化されることが知られていた。そこでわれわれはAtg4の制御因子を探索してきたが、これまでその因子を同定できていなかった。本研究において、われわれは液滴存在下でin vitroのAtg8脱脂質化実験を行い、液滴が存在するとAtg8の脱脂質化反応が阻害されることを見出した。つまりAtg4の酵素活性の制御は、他の分子との相互作用や、リン酸化などの翻訳後修飾によって立体構造が変化することによって行われているというよりは、むしろPAS液滴内部に浸透しづらいという局在の制限に起因していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに取得したデータは試行回数が少ないので、実験を繰り返し行うことによって各種データの定量化を進める。また、これまで本研究において、液滴内外でのAtg8-PE含有リポソームの局在を詳細に調べるために、凍結割断レプリカ法を用いた電子顕微鏡解析を行い、液滴の外周や内部にAtg8-PE含有リポソームを確認している。電子顕微鏡解析の実験条件をより詳細に検討することによって、液滴とAtg8-PE含有リポソームの関係性について結論を出す。Atg8のPE化はAtg9小胞上で起こることが想定される。そこで、Atg9を組み込んだリポソーム、もしくは出芽酵母から調製したAtg9小胞を用いてAtg8のPE化を行い、電子顕微鏡解析等を通して液滴との関係性を明らかにしていく。
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Research Products
(1 results)