2022 Fiscal Year Annual Research Report
キイロショウジョウバエの嗅覚系脳神経の求愛行動における機能の研究
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20K06733
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 暢明 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20517924)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エファプス / 性行動 / 多感覚統合 / フェロモン |
Outline of Annual Research Achievements |
キイロショウジョウバエの雄の求愛行動は非常に定型的で、雄は雌に定位した後、前脚で雌に触れ(tapping)、片翅を伸展して振動させ(片翅伸展)、雌の交尾器をなめる行動を示し、最終的に交尾に至る。雄は、このように各行動要素を決められた順に発現していくことで、求愛相手から形態・色情報やフェロモン情報などの刺激を順に受容していく。本研究は、定型的行動を構成する、こうした個々の行動要素が決められた順に発現するために必須の脳内神経機構を、キイロショウジョウバエの性行動をモデルに解明することを目的としている。 2022年度は、ショウジョウバエの嗅神経のうち、雄の発するフェロモン(cis-vaccenyl acetate)に応答するOr67d嗅覚受容体を発現する嗅神経(Or67d嗅神経)の応答解析を行った。非常に興味深いことに、cis-vaccenyl acetate刺激中に光環境が変化すると、Or67d嗅神経の発火頻度がそれに応じて変化することを発見した。その発火頻度の変化の一部には複眼の光受容細胞が光を受容することが必須でありながら、光受容細胞のシナプス出力は必須でないことが示された。さらに、移植実験等を行うことで、複眼の光受容細胞が光を受容することによって生じる細胞外の電位の変化によって光情報が脳に伝えられていることが明らかになった。このような神経伝達をエファプス伝達と呼ぶが、エファプス伝達が外界環境の文脈依存的に感覚応答を変化させることを初めて報告することができた。
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