2020 Fiscal Year Research-status Report
高機能化マイクロチップ電気泳動システムによる糖鎖、リン酸化の全自動解析
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20K06993
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山本 佐知雄 近畿大学, 薬学部, 講師 (10707954)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロチップ電気泳動 / 糖鎖 / リン酸化タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
高機能化マイクロチップ電気泳動システムによる糖鎖、リン酸化の全自動解析では、ガンなどの疾病によりタンパク質のリン酸化や糖鎖付加などの翻訳後修飾がどのタイミングでどのように変化するのかを解明する分析手段の開発について検討を行っている。 目的とする分析法を開発するためには前処理を含む一連の分析操作を一枚のチップ上で電圧印加のみで達成できる条件の開発が必要となる。チップ上で分析に必要な前処理を実施するために微細加工技術が用いられているが複数の前処理を美差し加工技術のみで達成するには非常に高価な設備と技術が必要となる。本年度は糖鎖解析にスポットを当て,医薬品の開発現場で実施されている糖鎖含量試験のようなルーチン分析の迅速化,血中抗体医薬品の詳細な体内動態の解明が可能なデバイスの開発に繋がると考えられるデバイスの開発に着手した。高機能化マイクロチップを用いる糖鎖の全自動高速構造解析法の開発に向けて本研究計画では①サイズ排除用マイクロチップを用いて培養細胞からの総タンパク質の抽出をPC膜,酵素による糖鎖の調製を透析膜上で連続して達成できるマイクロチップ電気泳動法の開発,②流路中での8-aminopyrene-1,3,6-trisulfonic acid (APTS)による蛍光標識化,③開発済みの前濃縮ゲルやレクチン封入ゲルをオンライン特異的濃縮や試料精製に利用することで前処理が一切不要な全自動糖鎖解析法の開発を目指している。具体的には単純な流路のみからなるマイクロチップの流路中に当研究室で開発した光硬化性のアクリルアミドゲル層をピンポイントで作製する技術を用い数枚の独立した流路を縦に配列することで作製した3次元型のマイクロチップを用いて糖鎖やリン酸化化合物の分析までに必要な前処理を含む一連の工程を流路中で行うことにより真のハイスループット分析を実現するための基礎検討を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は培養細胞からの総タンパク質の抽出やタンパク質の酵素消化を実施するためのサイズ排除用マイクロチップの開発と流路中での蛍光標識化の達成を目的として研究を遂行した。 サイズ排除用のマイクロチップの作製では独立した流路の間に目的とするタンパク質のみを捕捉することが可能な分子量のカットオフ透析膜を配置し、加圧しながらチップを硬化させる手法を用いた。50 kDのフィルターを流路が直行する部分に配置したチップを用いると、様々な夾雑物を含有させた試料溶液の中から目的とする分子量80 kDのヒト血清由来トランスフェリンのみを特異的に濃縮することが出来た。 マイクロチップの流路内で蛍光標識化を達成するための条件検討として試料にあらかじめ糖タンパク質であるトランスフェリンから調製した糖鎖を用い流路内での還元的アミノ化反応の実施を試みた。通常の直線の流路では反応効率が悪かったため二本の曲線が交錯するような流路を作製した。なお、この流路の作製も微細加工技術を用いずに行っている。 交錯型の流路を用いて糖鎖の還元的アミノ化反応を実施したところポンプの送液のみで高効率に反応が進行する条件を確立することが出来た。 本来ならば、この独立した2つの検討を組み合わせてタンパク質の抽出とオンライン蛍光標識化を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症対策のため、およそ3月程度十分な実験を行うことが出来ず、予定よりもやや遅れた結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は前年度の研究結果を組み合わせて以下の検討を行う。まず、細胞が通過できない程度の半透膜、あるいはナノメートルからマイクロメートルオーダーの細孔を持つポリカーボネート膜を用いて細胞を膜上に濃縮する。培養細胞から糖鎖を抽出するためには細胞に対して還元剤やベンゾナーゼなどを加えて総タンパク質を抽出した後,流路交錯型の流路に試料を送液し酵素を用いて糖鎖を調製する。現在のところ,細胞濃縮には細孔径が1 μmのPC膜を,その後の総タンパク質の濃縮には分子量1万のカットオフフィルターを用いる予定である。得られた糖鎖は電気的に交錯型の流路に送液することで反応の高効率化を実施する。オンラインで蛍光標識化試料を調製したのち,特異的抽出あるいは濃縮に有用な数種類の独立した機能を有するアクリルアミドゲルを別の流路内にピンポイントで作製し、細胞に発現している糖鎖のプロファイリングはもちろんのこと,抗体医薬品の生産ラインにおいて免疫原性となる糖鎖の特異的検出が短時間で簡単に,かつ網羅的に解析することが可能となる方法を開発する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策に伴い、大学への入校規制があったため実験を行うことが出来なかったため。同様に参加を予定していた学会がオンライン開催となったため旅費を使用する機会がなくなったため。
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Research Products
(12 results)