2022 Fiscal Year Research-status Report
遺伝学とプロテオミクスを組み合わせた炎症を制御する選別輸送機構の解明
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20K07340
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
茂谷 康 徳島大学, 先端酵素学研究所, 准教授 (70609049)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | STING / ACBD3 / オルガネラコンタクト / 細胞内輸送 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、STINGタンパク質の小胞体からゴルジ体への輸送機構を明らかにすることを目的としている。昨年度は近接標識プロテオミクス技術を用いてSTINGタンパク質が小胞体から脱出する過程で近接する分子の探索を行い、ゴルジ体常在性タンパク質ACBD3を同定した。そこで今年度はSTINGとACBD3の局在変化や分子間相互作用に着目し、STINGの輸送機構の解明に迫った。定常状態においてSTINGは小胞体膜全体に広がって存在するため網目状の局在パターンを示す。ところが、リガンドである環状ジヌクレオチドが結合して活性化するとゴルジ体に局在するACBD3と会合し、その結果、小胞体とゴルジ体が接触する特殊な領域に集積し点状の局在パターンに変化した。またACBD3のゴルジ体局在について超解像顕微鏡を用いて詳細に調べたところ、一般的なゴルジ体マーカーであるGM130やgiantinとは共局在しなかった。この結果から、ACBD3陽性の小胞体-ゴルジ体コンタクトサイトはユニークなゴルジ体サブ領域によって構成され、これが輸送経路の特異性を生み出している可能性が示唆された。さらにACBD3の欠損細胞を作製して解析した結果、STINGの小胞体-ゴルジ体コンタクトサイトへの集積とゴルジ体への移行が阻害され、STING依存的な炎症性サイトカイン産生やI型インターフェロン応答が低下した。以上より、ACBD3を介したオルガネラコンタクトサイトの形成によってSTINGのゴルジ体への輸送が駆動されるという新しい輸送機構が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ACBD3を介したSTINGの輸送機構に関する成果を論文発表することができた。これまでの報告では小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送は輸送小胞を介して行われると考えられており、当初はこの小胞輸送モデルを想定していたが、本研究によって小胞体とゴルジ体の接触領域を介した新たな輸送モデルを示すことができた。さらにACBD3はゴルジ体シス槽に局在すると考えられているが、超解像顕微鏡の結果から、ACBD3は他のゴルジ体シス槽のマーカータンパク質とは異なる領域に局在することがわかった。この成果を発展させることにより、ゴルジ体層板構造が微小サブ領域ごとに区画化される新しい原理の発見につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
STINGが小胞体-ゴルジ体コンタクトサイトに集積した後、どのようにして小胞体膜側からゴルジ体膜側へ移行するのか、その膜間移行メカニズムはわかっていない。これを明らかにするため、超高速超解像顕微鏡を用いたライブセルイメージングを行う。光安定性の蛍光タンパク質や蛍光色素を用いてSTINGやACBD3をラベル化し、高速撮影による退色を防ぐ工夫をする。またゴルジ体の微小サブ領域を構成するタンパク質や脂質を明らかにするため、ナノ空間内のオルガネラ膜構成タンパク質と脂質を同時に分析することができる独自のナノディスクオーム技術を開発する。
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Causes of Carryover |
当初計画していなかった成果を挙げることができたため、次年度はこの成果を発展させるための追加実験を行う。そのための実験費用を次年度に回す必要性が生じた。使用計画としては、超解像顕イメージングやナノディスクオーム解析に必要な消耗品費に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)