2021 Fiscal Year Research-status Report
芽殖孤虫の増殖・分裂および転移機序の解明と新規治療法の開発
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20K07468
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
石渡 賢治 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (00241307)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Sparganum proliferum / experimental model / mitochondrial enzyme / antibody |
Outline of Annual Research Achievements |
芽殖孤虫症の極めて高い悪性度は、孤虫(幼条虫)による人体内でのあらゆる臓器における無秩序な増殖と転移、および既存の抗寄生虫薬の無効果性に起因している。令和3年度では以下の研究を遂行した。 1)孤虫のミトコンドリア酵素活性の測定と酵素活性阻害剤の選定。寄生虫のミトコンドリア酵素活性を研究するグループのメンバーとの共同研究で、孤虫における合計9種類の好気的および嫌気的呼吸鎖の酵素活性を定量し、概ね各活性はエキノコックスのそれに類似することを確認した。エキノコックスは幼条虫がヒト体内で無性的に増殖、転移する点で孤虫に酷似する。その活性結果に基づいて2種類の阻害剤を選定した。一つは抗がん剤として有用性のある薬剤として報告されており、これら阻害剤は治療薬となる可能性が高い。 2)抗孤虫ウサギ抗体が認識する物質の組織学的検索。孤虫の可溶性成分を投与したウサギより回収した血清中の抗孤虫抗体が認識する物質を孤虫および感染マウスの組織切片上で検索した。その結果、抗孤虫ウサギ抗体は孤虫の外皮と体内の一部にのみ反応した。興味深いことに、この抗体はマウスの血液成分の一部とも反応した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、学内での立場上から実験遂行時間および労力が大幅に削減された。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症は、依然として予断を許さない状況にあり、引き続き実験遂行が大幅に削減されている状況に変わりはないが、体制としては落ち着いてきていることから、可能な限り研究計画に則って成果を出してゆきたい。今後の計画を以下に示す。 1)孤虫のミトコンドリア酵素活性を阻害する薬剤の効果。昨年度に選定した阻害剤の効果を培養系と一昨年に構築した増殖の評価系を用いて検討する。形態学的な評価も加える。 2)昨年度作製した抗孤虫ウサギ抗体が認識する物質の特定。孤虫の可溶性成分の電気泳動による分子量把握および抗孤虫ウサギ抗体/感染マウス血清中抗体によるイムノブロットなどによって孤虫に対して産生される抗体の認識物質を特定する。ウサギ以外の動物を使用した抗血清の作製も検討する。 3)孤虫の体勢軸の評価。孤虫の内部構造はほぼ均一で、増殖/分岐の始動部位が不明であるばかりでなく、頭部-尾部といった体勢軸の存在すら判然としない。そこで増殖様式を評価する前段階として、孤虫の神経細胞あるいは神経繊維といった神経系を明らかにすることで神経中枢(頭部?)の存在の有無を明らかにする。具体的には、Kikuchi-T et al. 2021で開示された遺伝情報から、近縁生物の神経に対するモノクローナル抗体を選定し、組織学的に神経の走行を解析する。 4)孤虫の増殖様式の評価。マウス腹腔内での孤虫の増殖時に標識された核酸成分を取り込ませることによって、孤虫の増殖部位(細胞)とその速度を評価する。具体的には、BrdUなどの取り込みを形態学的に検出する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大によって、学内の立場上から実験遂行時間および労力が大幅に削減された。
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