2022 Fiscal Year Research-status Report
Epidemiology of Adverse Event in Elderly Patients
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20K07839
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
太田 好紀 兵庫医科大学, 医学部, 特任准教授 (10516404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 剛 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30378640)
作間 未織 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60349587)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 臨床疫学研究 / 医療の質 / 医原性有害事象 / 高齢者 / 医療・福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者に発生する医原性有害事象は、死亡や重症度の高い健康被害に至ることが少なくない。さらに中等度もしくは軽微な健康被害であっても、結果としてフレイル状態から要介護状態へ陥るおそれがある。高齢者を対象とした医原性有害事象並びにエラーの質の高い臨床疫学研究は、世界的に見渡してもないのが現状である。本研究は我が国の高齢者の医原性有害事象並びにエラーの現状を明らかにし、必要なエビデンスを構築、効果的な対策を提示することを目的とする。 令和4年度は高齢者を対象に多施設前向きコホート研究を実施し、下記のデータベースの作成と解析を行った。 一次レビューで作成するデータは、研究期間中に対象施設に入院した全患者のカルテ、手術記録、インシデントレポートなどを継続的かつ網羅的に調査し、確立された方法論に基づき作成されたトレーニングマニュアルを用いて、事前に十分に訓練されたレビューワーにより患者背景並びに医原性有害事象やエラーの潜在的事象を全て抽出したデータとした。二次レビューとして、一次レビューのデータ全てについて独立した医師がレビューを行い、医原性有害事象とエラーを同定する。さらに医原性有害事象をⅰ)原因別(薬剤、手術、手術以外の手技・検査、看護、その他)、ⅱ)重症度(死亡、致死的、治療介入を要する程度、それ以外の軽度なもの)、ⅲ)予防可能性、ⅳ)緩和可能性、ⅴ)エラーの発生段階、ⅵ)責任職種について詳細に評価し、分類を行ったと同時に、専任の研究補助員によるデータ入力、さらにデータ固定を行ったデータベースを基に解析を行い、高齢者に対する医原性有害事象を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度の研究は研究計画書に従い二次レビューまでを終了した上でデータベースを作成し、データ解析まで行った。対象患者は704人、対象患者日は13827日、患者背景は平均年齢78歳、男性395人(56%)で内科系病棟255人(36%)、外科系病棟310人(44%)、集中治療室139人(20%)に入院した。医原性有害事象は318人(45%)、831件発生し、発生率は118件/100人、60件/1000患者日であった。医原性有害事象の原因は薬剤344件(41%)、手術132件(16%)、手術以外の検査・手技149件(18%)、看護126件(15%)、その他80件(10%)であった。重症度は死に至るもの8件(1%)、致死的なもの28件(3%)、治療介入を要するもの320件(39%)、それ以外の軽度なもの475件(57%)であった。自宅退院となった患者数443人のうち医原性有害事象を発生した患者は168人で、その割合は38%、自宅外退院となった患者261人のうち医原性有害事象を発生した患者は150人で、その割合は57%で有意に少なかった(P<0001)。医原性有害事象が生じると自宅退院できる割合は減少することが判明した。今後、高齢者に発生する医原性有害事象の実態、さらに医原性有害事象の要因及び、及ぼす影響など多面的に解析を検討し、高齢者の予後改善に寄与する論文を作成する。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究と同様に本研究においても質の高いデータベースを作成するためにはデータ収集及び、入力に多大な時間と労力を要した。当初の計画通り、これらの作業に要する時間及び労力が多大であり、研究補助員を増員することで対応してきた。データベースの作成並びにデータ固定は終了しており、令和4年度の国際学会で議論を行った。その内容を踏まえて、必要に応じてデータの追加収集を行う必要があるため、次年度はデータ解析を多面的に行い、論文を作成する。
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Causes of Carryover |
情報収集のため、国内外における学会参加に関する費用を計上していたが、全世界的なCOVID-19の感染拡大の影響から、世界情勢の見通しが立たなくなり、国際学会の開催が中止又は延期となるなどの事態に至ったため、科研事業の遅れにより未使用額が生じた。 データベースの作成並びにデータ固定は終了しており、令和4年度の国際学会で議論を行った。その内容を踏まえて、必要に応じてデータの追加収集を行う必要がある。次年度はより良い論文を作成するために助成金を活用する。
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Research Products
(5 results)