2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K07843
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
条 美智子 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (80432110)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 漢方方剤 / リンパ管 / 内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
五苓散と沢瀉がラット腸間膜集合リンパ管にどのような影響を与えるかをより理解するために、ラットに五苓散と沢瀉を経口投与し、リンパ管内皮細胞に関連する主要なタンパク質であるVEGFC、VEGFR3、Prox1について発現量を検討した。リンパ管内皮細胞の重要な増殖因子、リンパ管新生因子であるVEGFCは、コントロール、五苓散群、沢瀉群の間で変化がなかった。一方、VEGFCの主な受容体であるVEGFR3は、五苓散または沢瀉の投与により、コントロールに比べて有意に上昇した。特にVEGFR-3の発現量の増加については、五苓散が生体内のリンパ系に影響を与えることを裏付けるものであり、この影響に寄与しているのが沢瀉である可能性がある。五苓散と沢瀉の両方がVEGFR-3の発現増加を引き起こすということについては、五苓散と沢瀉に含まれる活性化合物がリンパ管内皮に直接刺激をするのか、あるいは生体内でリンパ管内皮に間接的に作用し他の細胞系に影響を与えることによってリンパ管に間接的に影響を与えていると思われる。また、リンパ管内皮細胞に発現する転写因子であるProx1は、五苓散や沢瀉の投与によってコントロールと変わらない値を示した。しかし沢瀉群では、五苓散群に対してProx1の有意な上昇が見られた。さらに、AQP1がリンパ管内皮細胞を含む内皮細胞に強く発現し血管平滑筋細胞の機能に影響するという報告があるが、どのような役割があるのかについてはまだ報告ないため、五苓散と沢瀉がリンパ管自体のAQP1発現にどのように影響を与えるかを検討した。その結果、Goreisanと沢瀉、コントロールとの有意差は認められなかった。以上の結果より五苓散やその構成生薬の様々な化合物が、腸管関門を通過してリンパ系に入り、リンパ管に活性を及ぼすことができる可能性が示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
五苓散とその構成生薬である沢瀉、猪苓、白朮、茯苓、桂皮の凍結乾燥エキスを作製し、ラット腸間膜リンパ管を用いてリンパ管の収縮速度、直径を解析しデータを得ている。五苓散の成分は、抗炎症作用を有することが報告されており、腸間膜リンパ管を通過することが知られている免疫細胞に影響を与え、ポンプ作用に間接的に影響を与えている可能性がある。さらに五苓散やその構成生薬の様々な化合物が、腸管関門を通過してリンパ系に入り、リンパ管に活性を及ぼすことができるという新たな結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はタンパク質局在性を解明するために、腸間膜リンパ管を顕微鏡下でvessel chamberに付属したガラスピペットに挿入し、AQP1抗体、podoplanin抗体、VEGFR-3 、VEGFR-C 抗体、LYVE-1 抗体を用いリンパ管の免疫染色を行う。以上の結果より、五苓散と沢瀉のラット腸間膜リンパ管収縮速度を低下はリンパ管形成やリンパ管新生には関与しないため、リンパ管の機能不全が考えられる。またヒト臍帯静脈内皮細胞に五苓散およびその構成生薬を投与し、細胞間の接着に関わる分子の解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度にウエスタンブロットや免疫染色に用いる各種抗体や試薬を購入しなかったため未使用額が生じた。 未使用額は次年度に用いる各種抗体や試薬の経費に充てることとしたい。
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