2020 Fiscal Year Research-status Report
MC法とSuperPosition法を組合せたBNCT線量計算アルゴリズムの開発
Project/Area Number |
20K08078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 卓志 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (60444478)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | BNCT / 治療計画 / 線量計算アルゴリズム / モンテカルロ法 / スーパーポジション法 |
Outline of Annual Research Achievements |
加速器中性子源を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の保険診療の開始に伴い、照射条件を決定する治療計画の効率化が重要な課題となっている。BNCTの治療計画では、線量計算アルゴリズムとしてMonte Carlo(MC)法が従来から用いられてきた。MC法は体内での中性子の挙動を正確に模擬できるが、高精細な線量分布を得るためには膨大な計算時間が必要であり、治療計画におけるボトルネックとなっている。本研究では線量計算の高速化を目指して新しいアルゴリズムの開発を行う。入射した中性子が生体内の原子との衝突により減速する過程(減速過程)をMC法で計算し、減速後に原子・分子と熱平衡に至る過程(熱化過程)を、X線治療において広く採用されているSuperposition法における線量カーネルとしてモデル化することで計算速度の向上を図る。本研究では、アルゴリズムの最適化および精度検証を通して、その有用性を実証する。2020年度は以下の項目を実施した。 計算時間短縮効果の確認:MC計算コードであるPHITSをベースとして上述のアルゴリズムを実装した。減速過程と熱化過程の切替エネルギーを1電子ボルトに設定し、MC法を用いた減速過程の計算をこのエネルギーにおいてカットオフすることで、計算時間の短縮を図った。その結果、全過程をMC法により計算する従来の方法と比べて、同数の粒子に対して計算時間が半分以下に短縮できることが確かめられた。 計算精度の検証:従来法の計算との比較に加えて、水ファントムを用いた実測との比較を行い、上述のアルゴリズムによる熱中性子束の計算精度を検証した。その結果、上述のアルゴリズムの計算値は深さ数cm以上の領域において良好な再現性を示したが、入射面付近では過大評価となることが明らかとなった。今後、計算精度の改善を目指して補正法の検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である2020年度は、アルゴリズムの主要部の実装と精度確認の一部を実施することができた。初年度に計画していたアルゴリズムの最適化についても良好な結果を得ており、2年目以降に計画していた実験的検証の一部を前倒しして実施することができた。また、アルゴリズムの課題についても抽出しており、その要因も特定できている。研究成果発表については、新型コロナウイルス感染拡大の影響による学会等の延期・中止に伴い、2020年度は実施できなかったが、本報告書作成時の2021年度当初において、複数の学会での発表もしくは発表申込をしている状況である。以上の状況から順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の2年目である2021年度は、実績概要に示したようにアルゴリズムが過大評価となる領域において計算精度を改善するべく、その要因を精査し、精度向上のための補正法の検討を進めていく。これに関連して、計算速度と精度の両面から、アルゴリズムの最適化を行っていく。研究期間を通して、より精密かつ広範な実測を行い、アルゴリズムによる計算値と比較検討することで総合的な精度検証を進める予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウイルス感染拡大の影響により研究環境が制限されていた状況において、既に保有している計算機資源等を有効に活用することで、購入を予定していた線量分布計算用計算機の購入を先送りしたこと、また、予定していた国内外の学会等への参加がほとんどできなかったことが主な理由である。 (使用計画) より効率的に研究を進めるため、当初の計画通り、線量分布計算用の計算機を既存の計算機に追加して購入する。他の費目については当初の計画通りに使用する予定である。
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