2020 Fiscal Year Research-status Report
Application of a gene expression visualization system to analyze cancer stem cell generation
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20K08101
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小川 良平 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (60334736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍵谷 豪 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (30524243)
趙 慶利 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (90313593)
渡部 明彦 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (20377253)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / 上皮間葉転換 / CRISPR-Cas9 / 遺伝子発現可視化 / 2A配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにいくつかの細胞(肺がん由来のA549細胞、前立腺がん由来のLNCaP細胞、肝臓がん由来のHep-G2細胞)にゲノム編集技術を応用して、上皮間葉転換(EMT)のスイッチとして働くと考えられるE-カドヘリン遺伝子の下流にバイシストロニックなタンパク合成を可能にするウイルス由来の2A配列を介して赤色蛍光タンパクDsRedの遺伝子を導入した細胞を構築した。これらのうちLNCaP細胞では、DsRed遺伝子に加えて、がん幹細胞(CSC)のマーカー遺伝子の一つであるOct4遺伝子の下流に、同様にゲノム編集技術により緑色蛍光タンパクGFP遺伝子を導入した二重組み換え細胞を構築した。このような二重組換え細胞を利用することで、E-カドヘリン遺伝子の発現抑制に対して反応性の異なるクロンを単離し、どのようなメカニズムでEMTを介してCSCが形成されるのかなど、その後の解析へとつないでいくことが可能となる。他の細胞にもCSCマーカー下流にGFPを導入する予定である。また、Oct4以外のCSCマーカー遺伝子の下流にも異なる色の蛍光タンパク遺伝子を導入することでより正確なCSCの単離が可能となり、詳細な解析に結びつくと考えている。 本研究テーマでは、遺伝子発現を可視化することにより、それらを指標に状態の異なる細胞を単離してくることが最初のステップとなる。したがって、まずその材料となる組換え細胞を構築することが必要である。この時、下流側に導入した蛍光タンパク質遺伝子の発現が上流遺伝子の発現に同調することを確認しなければならない。遺伝子の発現自体は従来の発現検出手法や蛍光タンパクの場合はそれら自身の蛍光で追跡することができるが、それらが同調しているかどうかについては、正確な定量性が必要となってくる。現在実施しているこれらの作業は困難であるが、今後の研究の展開にとって非常に重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPR-Cas9技術によるゲノム編集を利用した組換え細胞の構築およびその構造確認は比較的煩雑な作業であり、当初より時間がかかると考えていた。これまでに3種類の細胞(肺がん由来のA549細胞、前立腺がん由来のLNCaP細胞、肝臓がん由来のHep-G2細胞)にゲノム編集技術を応用して、E-カドヘリン遺伝子の下流にDsRed遺伝子を導入した細胞を構築した。これらのうちLNCaP細胞では、DsRed遺伝子に加えて、がん幹細胞(CSC)のマーカー遺伝子の一つであるOct4遺伝子の下流にはGFP遺伝子を導入した二重組み換え細胞を構築しており、さらにそれぞれについて構造の確認も終わっており、当初計画したものと同等の速さで進捗できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築した組換え細胞の蛍光タンパク発現量の定量による同調発現を確認したら、E-カドヘリン遺伝子のノックアウトかノックダウンができる仕組みを作成する。前者は、CRISPR-Cas9によるE-カドヘリン遺伝子の断裂によるものを考えている。後者は、レトロウイルスによるE-カドヘリン遺伝子特異的なshRNAによるものを考えている。まずは、このE-カドヘリン遺伝子の発現抑制により引き起こされるEMTがどのような条件下で引き起こされるのかについて明らかにしたい。その後、この手法によるEMT誘導を作成した二重組換え細胞に応用し、その後の遺伝子発現の変化などについて蛍光タンパクの発現を指標に経時的な解析を行い、適当なタイミングでE-カドヘリン下流の蛍光タンパク発現が喪失した細胞のうち、CSCマーカーを発現しているものと発現していないものに分けて取得する。取得した細胞群について、遺伝子発現の網羅的な解析などを通して、EMTからCSCへの過程でどのようなことが起こっているのかについて、特に、CSCになるものとならないものとの違いについて明らかにできればと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度は、コロナ禍のため予定していた旅費としての使用ができず、その分を消耗品に回し研究の進捗を試みたが、完全には使用しきれない分が残った。しかしながら、来年度の直接経費の2%にも満たない額であり計画を大きく変えて対応する必要はないと思われる。学会参加のための旅費に関しては、コロナ禍が終結したら、2020年度に使用できなかった分の旅費を意識して研究結果の情宣に努めたいと考えている。
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