2020 Fiscal Year Research-status Report
MYRF遺伝子を起点とした発熱時言動異常の病態解明
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20K08241
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
倉橋 宏和 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30621817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 洋平 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (30383714)
奥村 彰久 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60303624)
荻 朋男 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80508317)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | MYRF / 可逆性脳梁膨大部病変 / ミクログリア / ミエリン |
Outline of Annual Research Achievements |
MERS(可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症)は、発熱に伴い異常言動を呈する急性脳症である。急性期の頭部MRIで脳梁膨大部に異常信号を呈することが特徴で、大脳白質の主要な構成要素であるミエリンの障害が示唆されていた。我々は、2家系のMERS-異常言動スペクトラム家族例においてMYRF遺伝子変異を同定し、発熱時の異常言動と深く関わっている可能性を見出した。MYRFはオリゴデンデンドロサイトに発現し、ミエリン化・髄鞘維持に必要である。本研究の目的は、MYRF遺伝子に着目してMERS-異常言動スペクトラムの病態を解明することである。この目的を達成するために以下の研究を行なっている。1)MERS-異常言動スペクトラム症例に対する次世代シークエンス解析: MYRFにより発現が制御される遺伝子のうちミエリンに発現するものは約700あると報告されている。我々はMERS反復例・家族例を収集し、MYRF遺伝子に加えて、これらのMYRF遺伝子により発現が制御されうる遺伝子に注目してバリアントの解析を行っている。2)iPS細胞用いた研究:iPS細胞からオリゴデンドロサイトへの分化をより効率的に行うための実験を行なっている。初年度は培養環境中の酸素濃度に着目した。iPS細胞からオリゴデンドロサイト前駆物質に分化する際に、低酸素条件で分化誘導を行うことで誘導効率が上がると報告されている。我々は低酸素によりオリゴデンドロサイト前駆物質からオリゴデンドロサイトへの分化の効率も改善するかどうかの確認のためiPS細胞を3つの酸素条件に分けて培養した。しかしながら、低酸素状態ではオリゴデンドロサイト前駆物質までの分化は進んだものの、オリゴデンドロサイトへの分化は得られなかった。今後も条件を変えて分化誘導を試みる。また同時に、患者検体からのiPS細胞樹立を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MERS-異常言動スペクトラム症例に対する次世代シークエンス解析:MYRF遺伝子変異を認めた家系以外の症例を集積し、MERS反復例・家族例に対し次世代シークエンス解析を行った。MYRFが発現に関与している可能性のある遺伝子のバリアントに着目して解析を行った。その結果、遺伝子全体でのバリアントの数は対照群と差がなく、高頻度でバリアントを認める遺伝子も同定できなかったものの、低頻度ながらバリアントを認める遺伝子は対照群とは異なっていた。 iPS細胞を用いた研究:オリゴデンドロサイトへの分化を短時間で効率的に行うために、我々は酸素条件に着目した。iPS細胞からオリゴデンドロサイト前駆物質に分化する際に、低酸素条件で分化誘導を行うことで誘導効率が上がると報告されている。低酸素条件でのオリゴデンドロサイト前駆物質からオリゴデンドロサイトへの分化の効率の確認のためiPS細胞を3つの酸素条件に分けて培養した。しかしながら、低酸素状態ではオリゴデンドロサイト前駆物質までの分化は進んだものの、オリゴデンドロサイトへの分化は得られなかった。次世代シークエンス解析については、今後も新規症例を集積し解析を継続する。低酸素状態においてはオリゴデンドロサイト前駆物質へは効率よく分化するが、オリゴデンドロサイト前駆物質からオリゴデンドロサイトへの分化の効率が落ちる可能性があることが示唆された。しかしながら、iPS細胞の種類により特性が異なる可能性もあり、他の種類のiPS細胞を用いて条件の確認を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シークエンス解析については、今後も新規症例を集積し解析を継続する。低酸素状態においてはオリゴデンドロサイト前駆物質へは効率よく分化するが、オリゴデンドロサイト前駆物質からオリゴデンドロサイトへの分化の効率が落ちる可能性があることが示唆された。しかしながら、iPS細胞の種類により特性が異なる可能性もあり、他の種類のiPS細胞を用いて条件の確認を行う必要がある。
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Causes of Carryover |
細胞分離培養に用いた費用が予定を下回ったため、次年度使用額が生じた。次年度はiPS細胞を用いたオリゴデンドロサイト分化、患者検体からのiPS細胞樹立を行うとともにMERS症例の遺伝子解析を継続し、過不足なく使用する計画である。
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Research Products
(7 results)