2020 Fiscal Year Research-status Report
真菌による難治性気道アレルギー疾患の発症機序の解明と治療開発
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20K08577
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小熊 剛 東海大学, 医学部, 准教授 (20255441)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アレルギー性気管支肺真菌症 / アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 / 真菌 / アスペルギルス / 気管支喘息 / 光触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はCOVID-19蔓延の影響から研究協力者との緻密な連携が困難となり、臨床真菌株の選定・授受が遅延し、当初予定していた臨床真菌株のスクリーニングが困難となった。そこで今年度は現時点で入手可能な検体・試薬を用いた研究を先行して行った。 本研究では、ドラックリポジショニングによる難治性アレルギー性気道疾患の新規薬剤の創薬を目指している.まず本年度は候補薬剤のスクリーニングに先立ち、真菌抗原抽出物の刺激で気道上皮細胞からの産生誘導が確認されたアレルギー関連分子であるMUC5AC蛋白(ムチン関連遺伝子)の高速アッセイ系を検討した。 さらに本研究では、光触媒を用いた真菌アレルゲンの無害化(アレルゲン性の除去)を目指している。真菌アレルゲンは菌体のみならず、その分泌するプロテアーゼなどでアレルゲンとして作用する。真菌アレルゲンの除去のためには、真菌を死滅させるだけでは不十分であり、真菌アレルゲンとしての作用を除去することが重要である。本年はその基礎的検討として、真菌抗原抽出物のプロテアーゼ活性と気道上皮細胞から産生されるのMUC5ACの発現誘導能を指標に、酸化チタンによる光触媒反応の真菌(アスペルギルス)アレルゲンの無害化を検討した。紫外線照射を用いた酸化チタンの光触媒反応は、アスペルギルス抗原抽出物のプロテアーゼ活性(エラスターゼ活性)を約65%抑制した。さらにアスペルギルス抗原抽出物の刺激による気道上皮細胞(NCI-H292)からのMUC5AC mRNAの発現は、同様の酸化チタンの光触媒反応により10%以下に抑制された。一方、今回の検討でこの系で用いた紫外線照射は単独で組織障害性が認められた。臨床応用のためにはより組織障害性の低い反応系を検討する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度はCOVID-19蔓延の影響から研究協力者との緻密な連携が困難となり、臨床真菌株の選定・授受が遅延し、当初予定していた臨床真菌株のスクリーニングが困難となった。 本年度施行した研究は、概ね予定通り進められたが、真菌抗原は菌株・抽出法・保存状態などによる差(プロテアーゼ活性など)が大きいため、この計画順序の変更は全体計画に遅延につながると考え、上記評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究協力者との緻密な連携を再開し、臨床真菌株の選定・授受・スクリーニングを早期に再開したいと考えている。一方、COVID-19蔓延の影響からさらに計画が遅延するようであれば、まず既存の真菌抽出抗原を用いた実験系の確立、薬剤スクリーニングを先行し、その上で臨床真菌株への薬剤効果を検討するよう研究計画の変更を考慮する。 また、光触媒を用いた真菌アレルゲンの無害化(アレルゲン性の除去)の系で、酸化チタンによる光触媒反応を検討しているが、この系では紫外線照射を要するため組織障害性が問題となった。今後に臨床応用も鑑み、今後可視光を用いるなど実験系の修正を図る予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はCOVID-19蔓延の影響から研究協力者との緻密な連携が困難となり、臨床真菌株の選定・授受が遅延し、当初予定していた臨床真菌株のスクリーニングが困難となった。そこで本年度は入手可能な試薬・検体を用いた研究を先行して行った。また、当初現地への出向を予定していた学会のほとんどが規模縮小・リモートでの開催となったことも使用計画に影響した。2021年度は臨床真菌株を用いた検討と薬剤スクリーニングを中心に研究を進める予定である。そのため、細胞培養・ELISAなどの用いる試薬の購入が助成金の使用計画の中心となる。
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