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2022 Fiscal Year Research-status Report

血液透析患者のリフィリングは何が規定しているか?リンパ管の吸収・輸送機能の役割

Research Project

Project/Area Number 20K08597
Research InstitutionJuntendo University

Principal Investigator

清水 芳男  順天堂大学, 医学部, 教授 (50359577)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords運動療法 / 血液透析 / リンパ管輸送 / リフィリング
Outline of Annual Research Achievements

2022年度は、透析中の運動療法を行うと同時に血液流量計(BV計)による循環血液量をモニターし、自覚症状、血圧などのパラーメーターの推移を検討した。運動療法は、作業療法士・看護師の管理下において、ゴムバンドによる下肢の柔軟体操後、負荷可変式エルゴメーターを使用し15Wの負荷で5分程度のウォーミングアップを行い、最大20Wまで漸増し40分エルゴメーターによる運動を行った。運動中の動悸や胸痛など循環器系の自覚症状の出現は認められなかった。血圧は運動療法開始時から終了時までゆっくりと低下し、収縮期血圧が最大20~30mmHg低下した。運動終了後から30から60分程度血圧の変化はみられなかったが、その後急激に上昇し、透析開始時とほぼ同程度の血圧に回復した。BV計では、運動開始時から急激な血液量の減少が運動終了時まで継続し-5%程度に至るも、その後30分くらいから急激な増加が認められ、透析開始時から-2%程度の状態で終了にいたった。この傾向は体重がほとんど増加しない患者においても認められた。一方、運動を行わない状況下では、BV計における急激な循環血液量の変動は認められなかった。
運動時の運動筋の酸素需要量に応じて血液が配分される。この血液配分は運動筋の血管拡張および非運動臓器の反射性血管収縮によるとされる。2022年度の検討では、危惧された運動中の急激な血圧低下は見られなかったが、循環血液量は運動中に急激に減少し運動後に回復することが示された。この現象は、骨格筋への血流再配分によるものと思われるが、運動後の血液量の急峻な回復は運動なしの状態では認められないため、透析中に運動を行う効能については、更なる検討の余地が存在する。透析間の体重増加が著しいいわゆる「過除水」の患者に関する検討が、安全性の面および感染対策の強化により行えなかったため、2023年はこの点について検討を重ねたい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

現在の進捗状況は、研究が行える状況であるが、症例数を増加させることが難しく停滞している。その理由として、3点を挙げることができる。【医療安全上の課題】透析中の運動療法はガイドラインが策定され、医学的・社会的にも認知されており、肯定的な評価が得られていると考えられる。一方、実際には極少数の先進的な医療機関が手探りで行ってきた知見をもとに編み出されており、申請者の施設では全く経験がなかった。幸い非透析日におけるリハビリテーションセンターでの運動療法の経験と蓄積は存在するため、研究のアイデアとその実践には問題がなかった。申請者の勤務する施設は、地方の中核病院として主に急性期患者を診療しているため、運動療法が可能な患者が少なく、短期で退院することが多い。このような状況で、「運動療法による透析中の血圧低下を防止する」という当初の目的に合致するいわゆる過除水の患者をはじめから対象とすることは医療安全上特に循環器疾患の増悪が懸念され難しかった。【資格】透析中の運動療法が保険収載されたため、本治療に係る職員の講習が必要になった。申請者の施設では3名の看護師が講習を受け、資格を取得した。資格取得までの時期については、作業療法士のみによる管理で行っていたため、例数を増加させることが難しかった。【感染対策】申請者の勤務する施設はコロナウイルス感染症(SARS-Cov2)の専門病棟を開設し、他施設で発症した透析患者も積極的に受け入れてきた。また、院内でもクラスターが発生したため、一時期は研究を行うゆとりが全く得られない状況であった。さらに、隔離期間中の透析は、専門病棟で出張透析を行っていたが、アフターコロナの患者は透析センターの隔離可能なベッドで治療していた。研究を進める点では最悪なことに、BV計が装着された透析コンソールは隔離ベッドにあるため、感染対策上も研究を進行させることができなかった。

Strategy for Future Research Activity

2021年、22年度の研究は様々な理由で進捗が遅れてしまったが、2023年度は問題点が解決に向かっている。上記に挙げた問題点について、以下の対策を行う。【医療安全上の問題】本研究に合致するのは透析間の体重増加が多く、透析中に除水量が多い「過除水」の患者である。2022年では、循環器合併症の発生をおそれたため除水量の少ない対象を選んでいた。この経験を活かし、運動を行っていた患者に対してまず、研究に参加をお願いする。少数ながら、申請者の在籍する施設にも外来透析を行っている方がいるため、歩行可能な方々に対し循環器主治医と相談の上運動療法を行い、研究に参加いただく。【資格】スタッフの資格が取得されたため、研究の継続に支障がなくなった。【感染対策】SARS-Cov2に関しては、規制がかなり緩和されきた。この3年にわたるコロナウイルス感染症の蔓延という経験は、スタッフに大きな負担を与えたが、未知ウイルス感染症例を経験し、必要な対策のノウハウが得られたと考える。新規入院患者に関しては、事前のPCR検査が全例行われており、発熱時には迅速PCR検査(Riat)が陰性でなければ透析センターには入室できない取り決めとなっており、今後も継続の予定である。入院される患者も感染症から増悪する病態で生命維持が困難な状態から、予定を立てて検査・治療を行うことが可能になってきた。購入した負荷可変式エルゴメーターもさらに使用中である。感染対策としては、使用後の消毒が必須であるが、複数台あるためこちらも連日運動療法を行うことが可能となった。このようにヒト・モノ・ノウハウの問題がようやく解決してきた状況にあり、予定された研究を再開し、新たな知見を得たい。エルゴメーターが使えない患者に関してEMS (electrical muscle stimulation)の導入を行い、受動的な運動の効果についても検討を行う。

Causes of Carryover

【物品関連】2022年度はSARS-Cov2の蔓延により、透析センターでのデータ集積に支障が生じていた。重症のSARS-Cov2患者の受け入れおよび院内発症患者の増加によるSARS-Cov2以外の疾患を持つ患者の受け入れ制限、スタッフの感染による業務量の増加によって研究対象患者が減少した。一方、2021年度に購入した物品(エルゴメーター「てらすエルゴ」)を使用し、研究を継続することが可能であったため、当初の計画における研究費の費消額が減少した。また、データが十分に集積されていれば、解析を行い研究のまとめに移行する時期であったが、上記の理由により症例数が乏しいため解析に必要なパソコンやアプリを購入せず、今後最新の機器を購入することにした。また、透析中の運動療法に関する保険収載に関するスタッフの教育期間が必要であったため、無理な研究遂行を行うことをせず、1か月程度研究を停止していた。【出張制限】本来であれば、米国腎臓学会(ASN)や欧州腎臓・透析・移植学会(ERA-EDTA)などへ研究成果の発表および海外における同分野の研究について情報収集を行う予定であったが、渡航制限により旅費も遣うことがかなわなかった。2023年には、中間的なデータではあるが、発表を行う予定である。以上の理由により、研究費の繰り越しが生じた。

  • Research Products

    (12 results)

All 2022

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results) Presentation (7 results) Book (3 results)

  • [Journal Article] Post-Operative Kidney Function Using Deep Hypothermic Circulatory Arrest (DHCA) in Aortic Arch Operation2022

    • Author(s)
      Higo Masahide、Shimizu Yoshio、Wakabayashi Keiichi、Nakano Takehiko、Tomino Yasuhiko、Suzuki Yusuke
    • Journal Title

      International Journal of Nephrology and Renovascular Disease

      Volume: Volume 15 Pages: 239~252

    • DOI

      10.2147/IJNRD.S373828

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] The Influence of an Unexpected Switch of Hemodialysis Facilities on the Quality of Life (QOL) in Hemodialysis Patients2022

    • Author(s)
      Shimizu Yoshio、Wakabayashi Keiichi、Nakata Junichiro、Io Hiroaki、Hamada Chieko、Tomino Yasuhiko、Suzuki Yusuke
    • Journal Title

      International Journal of Nephrology and Renovascular Disease

      Volume: Volume 15 Pages: 151~160

    • DOI

      10.2147/IJNRD.S358915

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 味覚に着目したマウス蓄尿法の開発(第2報)2022

    • Author(s)
      清水芳男、若林啓一、安部憲一郎、平沢智美、加藤有紗、鈴木祐介
    • Organizer
      第65回日本腎臓学会学術総会
  • [Presentation] 血液透析患者の痒みと視神経乳頭周囲所見の関連2022

    • Author(s)
      清水芳男、加藤有紗、小笠智美、若林啓一、鈴木祐介
    • Organizer
      第67回日本透析医学会学術集会・総会
  • [Presentation] 膿瘍を伴う化膿性大胸筋炎を契機にCKDの急性増悪を来した糖尿病性腎症の一例2022

    • Author(s)
      池田尚基、若林啓一、加藤有紗、小笠智美、安部憲一郎、清水芳男、鈴木祐介
    • Organizer
      第52回日本腎臓学会東部学術大会
  • [Presentation] 慢性腎不全の透析移行期に肺結核症の診断に至った1例2022

    • Author(s)
      安部憲一郎、若林啓一、清水芳男、上田誠二、合田朋仁、鈴木祐介
    • Organizer
      第52回日本腎臓学会東部学術大会
  • [Presentation] シリアル食品(フルグラ)の腎不全食としての可能性2022

    • Author(s)
      長澤肇、大塚智之、大熊輝之、福原佳奈子、森一祥、海部久美子、松下訓、若林啓一、清水芳男、上田誠二、鈴木祐介
    • Organizer
      第60回静岡腎不全研究会
  • [Presentation] 診断に苦慮したTubulointerstitial nephritis uveitis (TINU) syndromeの一例2022

    • Author(s)
      平沢智美、加藤有紗、池田尚基、若林啓一、清水芳男
    • Organizer
      第64回静岡腎セミナー
  • [Presentation] 初回から9年後のrepeating biopsyにて診断しえたIgA腎症2022

    • Author(s)
      福原佳奈子、安部憲一郎、森一祥、長澤肇、若林啓一、清水芳男
    • Organizer
      第65回静岡腎セミナー
  • [Book] CKD診療テキスト改訂2版2022

    • Author(s)
      清水芳男 共著
    • Total Pages
      399
    • Publisher
      中外医学社
  • [Book] 歯科におけるくすりの使い方2023-20262022

    • Author(s)
      清水芳男 共著
    • Total Pages
      467
    • Publisher
      デンタルダイヤモンド社
  • [Book] 別冊 日本臨牀 腎臓症候群(第3版)III2022

    • Author(s)
      清水芳男 共著
    • Total Pages
      455
    • Publisher
      日本臨牀社

URL: 

Published: 2023-12-25  

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