2021 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性虚血性疾患に対する体性幹細胞由来分泌因子を用いた治療法の開発
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20K08874
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
神谷 英紀 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70542679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
恒川 新 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (40612768)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血管新生 / ヒト乳歯歯髄幹細胞 / ヒト臍帯静脈内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病は心血管疾患および重症下肢虚血などの虚血性疾患の重要な危険因子である。近年,虚血性疾患の新たな治療法として再生医療が期待されている。我々は以前に,ヒト乳歯歯髄幹細胞(SHED)培養上清(SHED-CM)の糖尿病性神経障害に対する有効性を報告した。その要因としては,SHEDからの分泌因子群による末梢神経栄養血管の血流改善および血管新生の促進が一因であることが示唆されているが,SHED培養上清が血管新生を促進する詳細なメカニズムは未だに明らかでない。そこで2020年度の研究において、SHEDからの分泌因子が血管内皮細胞へ及ぼす直接的な効果を検討し、SHED-CMはヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)のviabilityを有意に増加させ、また血管内皮細胞遊走能を有意に促進することを報告した。さらにSHED-CMはHUVECsの管腔形成を有意に促進した。また血管新生の一連の過程を包括的に評価するAortic ring assayにおいて,SHED-CMの添加によってラット大動脈輪からの新生血管長の有意な伸長を認め,SHED-CMの血管新生促進効果が確認された。以上の2020年度の研究より、SHED-CMは虚血性疾患に対し今後の臨床応用が期待される治療リソースと考えられ、さらなる検討を進めている。 現在は、SHED-CMの成分において効果のあるフラクションの同定を試みているが、まだ達成できていない。また2021年度の計画として糖尿病モデルマウスの後肢虚血モデルを作成し、それに対するSHED-CMの治療効果を検討する予定であったが、現時点で研究に見合った下肢虚血モデルの作成ができていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SHED-CMの成分において、6 kDa以上の分画がwhole SHED-CMと同等かそれ以上の効果を示していることを確認している。現在、その6kDa以上の分画を絞り込み、効果のあるフラクションの同定を試みているが、それを見つけ出すことができていない。 また2021年度の計画として糖尿病モデルマウスの後肢虚血モデルを作成し、それに対するSHED-CMの治療効果を検討する予定であり試みている。しかし現時点で治療効果を判定できる再現性のある下肢虚血モデルの作成ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1:分泌因子の作用因子同定と分子作用機序の解明を進める。2:解明しえた有効分泌因子を糖尿病モデル動物へ筋肉内投与し、その効果を細胞移植の効果と比較検討する。臨床応用へ向け細胞移植もしくは分泌因子投与のいずれの方法が効果と安全性において優れているかを検討する。
1:分泌因子の作用因子同定とその分子機序の検討 歯髄幹細胞培養上清をフラクション化することで可能な限り不要物を除去すると同時に、効果のあるフラクションに絞りこまれた上清を用いて、プロテオーム解析法(HPLCやLC/MS解析)やサイトカインアレイを用いて効果を有する作用因子の同定を行い、その分子作用機序を検討する。 2:糖尿病モデルマウスにおける分泌因子の虚血性疾患に対する効果の検討 4~6週齢のC57BL/6マウスの腹腔内へのstreptozotocin投与により1型糖尿病モデルマウスを、2型糖尿病モデルマウスとしてdb/dbマウスを使用する。血糖上昇確認後,大腿動脈を結紮することで後肢虚血を作り出す。その後、歯髄幹細胞培養上清,もしくは上記で解明しえた有効分泌因子をマウスの下腿筋肉内へ投与する。投与量と投与回数は増減調節し検討する。Laser Doppler perfusion imageを用いて、患側、健側の血流を継時的に評価する。またもしこの後肢虚血モデルをうまく作成できない場合、以前別の研究で用いた潰瘍モデルを作成し、SHED-CMの効果を検討する。
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