2021 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレス応答転写因子ATF6βによる肥満・糖尿病の増悪化機構の解明
Project/Area Number |
20K08909
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
三宅 雅人 徳島大学, 先端酵素学研究所, 講師 (30588976)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / 肥満 / 糖尿病 / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小胞体ストレス応答の中でもATF6βを介した転写制御機構に着目して、肥満・糖尿病における細胞機能低下及び病態悪化の分子機構の解明とATF6βを標的した肥満・糖尿病に対する創薬応用を目指す。昨年度に引き続き、CRISPR/Cas9システムを用いてATF6βとパラログであるATF6αを組織特異的に2重欠損させる遺伝子改変マウスを用いて、本年度は肝細胞特異的欠損マウスを樹立し解析を行った。このマウスは、通常食飼育下において体重が低下傾向にあるものの大きな差を認めなかった。一方で、高脂肪食を給餌したときにおいて体重増加が抑制されて、脂肪重量が低下していた。さらに欠損マウスでは肝臓重量も減少していた。一方、解析を予定していたATF6β floxマウスを樹立することでATF6βを単独で欠損できるようにした。このマウスを用いて肝細胞特異的にATF6βを欠損させたところ、通常食と高脂肪食ともに体重増加に優位な差は認められず、また耐糖能にも差は認められなかった。以上のことから、肝臓においてATF6βは、単独では高脂肪食による肥満や糖尿病の進展に関与していないことが示唆され、全身性ATF6β欠損による肥満抑制はこれまで検討した骨格筋、脂肪、単球、肝臓以外の臓器の働きによってなされているか、複数の細胞種での欠損の結果として現れている可能性が考えられた。また、肝臓においてATF6αとATF6βの2重欠損によって肥満が抑制されたことからATF6αとATF6βがin vivoにおいても機能を互いに補完しながら肥満促進に働くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開始直後に生じた遺伝子改変マウスにおける問題を別の遺伝子改変マウスを用いることで解析を可能にした。高脂肪食給餌での表現型解析自体は順調に進行しているが、当初の仮説における全身性ATF6β欠損マウスと類似の表現型を示す肝臓、骨格筋、脂肪、単球のそれぞれにおける組織特異的ATF6β欠損マウスを見出すことはできなかった。以上のことから、計画通りには進行していないものの主要な代謝臓器以外におけるATF6βによる肥満促進に寄与している可能性を見出した。また、肝臓においてはATF6αとATF6βの2重欠損マウスにおいて高脂肪食給餌で体重増加が抑制されることを見出している。仮説どおりに進んではいないものの新たな知見を得ることができたため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPR/Cas9システムを用いた肝細胞特異的ATF6αとATF6βの2重欠損マウスにおいて肥満抑制作用を見出したため、今後は本マウスの脂肪肝の程度や糖新生など肝臓の肥満・生活習慣病に関連した表現型に焦点を当てて解析を進めいていく予定である。また、CRISPR/Cas9システムではオフターゲットによる非特異的遺伝子破壊の可能性も考えられる。そのため、従来の方法で樹立されたATF6αとATF6βのダブルfloxマウスを用意しており、このマウスを用いて肝細胞特異的欠損マウスを作成し、表現型の確認を進めていく。また、化合物スクリーニングに関しては肝臓において表現型解析とマイクロアレイ解析やクロマチン免疫沈降法によって標的遺伝子を同定した後に行っていくことを予定している。
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Research Products
(3 results)