2022 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム・遺伝子変異プロファイル解析を用いた膵癌における新規治療戦略の構築
Project/Area Number |
20K09094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浅野 賢道 北海道大学, 大学病院, 助教 (10756688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 透 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70645796)
土川 貴裕 北海道大学, 大学病院, 講師 (50507572)
平野 聡 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50322813)
畑中 豊 北海道大学, 大学病院, 特任准教授 (30589924)
畑中 佳奈子 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (10399834)
天野 虎次 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (20374514)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵癌 / 化学療法 / ゲノム解析 / 遺伝子変異 / precision medicine |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は新型コロナ感染症による行動制限も緩和され、概ね順調に研究を進めることができたものの、緊急事態宣言による初年度の研究開始の遅れが大きく影響し、研究を終えることは困難であった。 昨年度の研究過程により、生検検体からのDNA抽出は検体量が極めて少量であるため、ターゲットシークエンスに用いるだけの十分なDNA量を確保することが困難であることが判明した。術前治療前の患者から得られている試料は生検検体と血液のみであるため、血液を用いた解析(liquid biopsy)を優先的に行うことにし、術前治療施行前に採取された血液の血漿中cell-free DNA(cfDNA)の解析を行った。cfDNAの抽出には、NucleoSnap(R)-cfDNAを用いた。膵癌由来のDNA(circulating tumor DNA: ctDNA)の有無については、KRAS遺伝子の変異をベンチマークとし、droplet digital PCRを用いたスクリーニングを行い、ライブラリー調整したのち、ターゲットシークエンスを行った。 28症例に対してctDNAの解析を行った結果、術前治療前にいずれかの変異を認めた症例は12例(43%)であり、TP53、KRAS、EGFRの順に多かった。このliquid biopsyのデータを元にtumor informed approachを行ったところ、変異を有した症例は15例(54%)であり、変異数はやはりTP53、KRAS、EGFRの順に多く認められた。次に、同一症例の術前治療後(術前)の血液検体の解析も行った。その結果、変異を認めた症例は7例(25%)のみであり、変異を認めたのはKRAS、TP53、SF3B1のみであった。 一方、術前治療後の遺伝子変異解析(ターゲットシークエンス)は概ね順調に解析を進めており、早期再発症例(術後1年未満の再発)および長期生存症例(術後5年以上生存)の解析をそれぞれ10例ずつ追加した。現在、さらなる解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度も前年度に引き続き、概ね順調に研究を進めることができたが、最終的に令和2年度の大幅な遅れを取り戻すことはできなかった。ctDNAの解析に予定より多くの時間を要したことも一因であるが、すべての実験系は確立しているため、今後、比較的短時間で症例数を増やすことが可能と考えている。また、既に膨大な臨床情報のデータベースも作成済みであり、遺伝子変異情報との統合解析もすぐに可能な状況である。1年間の延長をせざるを得ない状況であり、計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
血液検体を用いたctDNAの遺伝子変異解析(liquid biopsy)の実験系は確立することができ、また、保存検体の質も十分解析可能であるため、今後、順次解析を進め、データを蓄積して行く。当教室が保管している血液サンプルは術後観察期間が比較的短いため、長期生存例の解析は不可能である。しかし、本研究課題の目的の一つである術後1年以内に再発を来たした早期再発例の解析は十分可能であり、早期再発症例における特有のゲノム・遺伝子変異パターンを明らかにすることを目指す。術前治療前後の血液を保管しており、より詳細な解析を行うことができる。 切除検体を用いた解析に関しては概ね順調に進めることができているため、さらに多数例での解析を進める。また、結果が整い次第、膨大な臨床情報との統合解析を行い、治療介入前の予後予測および治療方針決定のためのアルゴリズムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
研究進捗の遅れが生じたため、残金が発生した。令和5年度も研究完結に向けてliquid biopsyおよびターゲットシークエンスを行うため、これらに残金を充てる予定である。
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