2020 Fiscal Year Research-status Report
吸入麻酔薬の意識消失作用におけるニューロテンシン神経系の役割
Project/Area Number |
20K09204
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中村 正帆 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (80734318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 雄朗 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70506633)
長沼 史登 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (80780519)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 吸入麻酔薬 / ニューロテンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
吸入麻酔薬がどのように作用し、意識を消失させるのか不明の点が多く残されている。ニューロテンシン神経系は覚醒に関連する神経核に広く投射しているので、吸入麻酔薬の意識消失作用を発揮する過程において、皮質下覚醒系を司る中心的な神経回路として重要な役割を果たしている可能性が考えられる。そこで本研究では吸入麻酔薬の意識消失作用におけるニューロテンシン神経系の役割を検証する。 まず視床下部ニューロテンシン神経細胞の分布と投射先を同定するため、ニューロテンシン神経細胞特異的に蛍光色素を発現させ、全脳にわたり薄切し免疫染色を行った。外側視床下部にニューロテンシン神経細胞が局在し、分界条床核 BNST, 腹側外側視索前野VLPO, 前脳基底部無名質SI, 腹外側中脳水道周囲灰白質vlPAG, 腕傍核PB, 青斑核LCなどの睡眠覚醒系に関与する脳領域に、多くの神経線維を投射していることが明らかになった。また吸入麻酔におけてニューロテンシン神経細胞の活性化がどのような影響を及ぼすかを検討するために、化学遺伝学的手法でマウスの視床下部ニューロテンシン神経細胞を特異的に活性化し、吸入全身麻酔から覚醒するまでの時間を測定した。その結果、ニューロテンシン神経細胞を特異的に活性化すると、全身麻酔からの回復が早くなった。一方、麻酔投与開始から体動が消失するまでの時間は差が無かったため、ニューロテンシン神経細胞は全身麻酔の導入には影響せず、回復期の覚醒に関与することが示唆された。次に、多様な神経線維投射のどれが覚醒に関与するか詳細に検討するため、神経投射先特異的な役割を検討した。神経線維投射先特異的な神経活性を制御するために光遺伝学的手法を用いるが、ベクターの極微量注入と光ファイバー埋め込みを実施し、予備的なデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
輸入製品である、in vivo ファイバーフォトメトリー 装置とin vivo深部脳波測定微少ワイヤー電極の納入が、COVID-19拡大により半年以上遅れたため。技術者の国内移動も困難であったため、設置も遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivo ファイバーフォトメトリー 装置の設置がほぼ完了し、動物へのカルシウムセンサー導入とファイバー留置術が問題なく実施できたので、吸入麻酔下の視床下部ニューロテンシン神経細胞の活性について、今年度中にデータを取得し解析する。in vivo 微少ワイヤー電極深部脳波測定は実施が大幅に遅れているので、代替として急性脳切片を用いたin vitro 電気生理学的実験への切り替えを検討する。化学遺伝学的手法および光遺伝学的手法を用いた視床下部ニューロテンシン神経細胞特異的活性修飾が吸入麻酔薬による意識消失作用に与える影響については、引き続き正向反射消失および不動化の潜時で評価しつつ、中枢神経系の活動性も定量する目的で脳表脳波も用いて検討する。
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Research Products
(1 results)