2020 Fiscal Year Research-status Report
頭部外傷特異的な免疫応答と二次性感染症におけるインフラマソーム制御機構の解明
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20K09260
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 剛志 北海道大学, 医学研究院, 助教 (30455646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山川 一馬 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (50597507)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CyTOF / Cytobank / 盲腸結紮穿孔敗血症モデル / 頭部外傷 / OMIQ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の中心的役割を担うCyTOF実験系の確立に向け、臨床検体を用いての、①CyTOF用検体処理工程の確立、②CyTOF測定、③Cytobank→OMIQでのCyTOF測定結果解析を行い、それに並行して、本研究のベースとなる基礎研究では、④頭部外傷、熱傷、盲腸結紮穿孔(CLP)敗血症モデルの確立、⑤頭部外傷後、および熱傷後CLPの生存率の確認と腹水細菌カウント、⑥CyTOF用検体(血液、腹水)の処理と保存、を行った。 想定していた工程で①、②を行ったが、処理過程で細胞の過剰な凝集が起こりCyTOF測定機器がつまってしまうといった不測の事態が発生した。共同研究先の大阪医大の担当者とも協議し、あえて細胞凝集を起こす薬剤を添加し、フィルターにかけ測定可能な細胞を採取する工程を確立させた。この細胞を用いて行ったCyTOF測定結果により、③の解析が可能であったことが確認された。 ④において、CLPモデルは、腹膜炎による敗血症モデルとして一般的に使用されているもののマウスの個体差・手技・方法により誤差が生じることが問題となっており、可能な限り誤差に寄与する因子を統一させることで誤差を少なくしCLP標準化を図った。ヒトの敗血症生存率約30%と同様になるよう検討し、盲腸結紮位置は全長の50%、穿刺は盲端から5mmの位置で21G針2穴とするなどの他、細かい手技についても可能な限り統一した。このモデルを用いて⑤を行い、ほぼ想定通りの結果を得ており、⑥を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的役割を果たすCyTOFは非常に高額な実験系であるため、様々な経費削減策を講じ、測定、解析が可能であることが確認できた。主な対策は、①CyTOF抗体の輸入、②CyTOF検体を大阪へ輸送、③CyTOF受託解析、④CytobankからOMIQへ、の4点に集約される。 ①市販のCyTOF用抗体は1抗体約65,000円/100テストであり、1パネル約40抗体を用いるため、260万円/1パネル/100テストの費用を要するが、研究代表者和田が所属したHarvard Medical SchoolのJames A. Lederer研究室から、1抗体約$200/200テストでの購入が可能であり、200テストの1パネルを購入した。冷却状態を保っての米国からの配送を要するが、抗体の質を損なうことなく輸入ができ、その抗体を用いての良好な染色が確認できた。②CyTOF染色は特殊な染色工程を要する。共同研究先の大阪医大ではその手技に熟練した技術者が在籍しているため、当方で収集した検体を-150℃の液体窒素内に保管したまま配送し(エア・リキッドCRYOPDP社)処理を依頼した。③CyTOF機器は定価9600万円の非常に高額な機器であるが、聖路加SRL受託解析を用いることで30-50万細胞の測定が5万円で可能なため、これを利用した。④の解析ツールにおいては、年間使用料30万円のCytobankから23万円と安価でより機能の充実したOMIQの使用に切り替えた。 以上により、予算内でCyTOF測定が可能であることが確認され、次年度以降の本実験へとつなげられる状態となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、感染症の原因を肺炎球菌を用いた肺炎と想定していたが、当施設で細菌を用いる実験を行うには、細菌の保存、使用実験室、実験手続きなど数多くの障壁が存在し円滑な実験遂行が困難と考えられたため、肺炎に代わる感染症として自己の細菌で感染症を誘発する盲腸結紮穿孔(CLP)モデルを用いることとし、予定研究を継続していける目途がたった。これを用いて、頭部外傷後CLPで起こる免疫変化を血液、腹水検体を用いてCyTOFによる網羅的解析を行う。同時に、LUMINEXを用いた液性因子の網羅的解析も検討している。そして、頭部外傷特異的な免疫応答に関与していると想定されるNalp1インフラマソームのノックアウトマウス、特異抗体を用いたNalp1ノックダウン系において同様の検討を行う予定である。そして、薬物的Nalp1活性化の二次性感染症予防/治療薬としての可能性検討のためムラミルペプチド投与による免疫学的変化、生存率などを確認する。
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Causes of Carryover |
非常に高額な実験であるCyTOFを行う前に、前述のように予備実験としてヒト血液サンプルの処理、盲腸結紮穿孔敗血症モデルの標準化などの予備実験を行ったため、そしてコロナ禍のため学会出張がなくなったのが次年度使用が生じた主因である。 繰り越した予算を加え、マウスの血液、腹水を用いたCyTOFを行う予定である。
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