2020 Fiscal Year Research-status Report
Histone/NETsを標的とした外傷性凝固障害の病態生理解明と治療法の確立
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20K09280
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
丸藤 哲 北海道大学, 医学研究院, 名誉教授 (30125306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 剛志 北海道大学, 大学病院, 助教 (30455646)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 外傷 / 自然免疫反応 / 凝固線溶反応 / 播種性血管内凝固症候群(DIC) / 凝固障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
多施設共同で集積した外傷症例276症例を対象に、外傷性凝固障害(trauma-induced coagulopathy, TIC)と外傷後の播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)の凝固線溶動態は同一である、と言う仮説の証明を試みた。 TIC/DICの血小板・凝固線溶動態を比較検討し、両者が同一の病態で有ることを以下の結果から証明した。 TIC/DICともに、1)活性化プロテインCが上昇するが、トロンビン制御可能な値ではない、2)その結果外傷直後から大量のトロンビン産生が起こる、3)トロンビン産生により消費性凝固障害が起こり血小板数、アンチトロンビン、プロテインCが減少する、4)外傷直後に血管内皮細胞から遊離したtissue-type plasminogen activator (t-PA)が高値となり線溶亢進が起こるが約3時間の経過を経てplasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1)発現が誘導され線溶抑制が生ずる、5)DIC症例は非DIC症例と比較して輸血量、新鮮凍結血漿投与量、濃厚血小板液投与量が多く(いずれもp<0.001)、病院死亡率は明らかに高値である(7.5 vs. 26.7%, p=0.001)。 さらに本研究は、DIC病態が外傷直後から起こる事を証明した事に意義があり、上記結果とともに外傷症例の治療方針に大きな示唆を与えるものと推定される。 これらの結果は、2020年7月開催(online) International Society on Thrombosis and Haemostasis Congressで報告し、同学会機関誌であるJournal of Thrombosis and Haemostais (202018:2232-44)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年研究実績は申請した基盤C研究のpilot studyと位置づけられる。 2020年はコロナ感染の蔓延、緊急事態宣言、さらにはコロナ感染対策の研究を優先せざるを得なかった事などにより申請研究計画の大幅修正と遅延を余儀なくされた。 基礎研究に先立ち臨床研究を行う予定であり、2020年末までに臨床研究用研究計画書作成の為のデータ抽出項目を設定し、診療録データベースからの項目抽出ソフトを開発できた。 研究データ抽出期間は6年+αとし、抽出項目はアンチトロンビンを含めた血小板・凝固線溶系指標および病的凝固異常症診断のためのDICスコア、病態重症度指標としてAPACHE スコア、SOFAスコア、外傷重症度指標であるInjury Severity Score等とした。 主要評価項目として病院転帰、副次的評価項目として多臓器臓器不全発症(SOFAスコア>12で定義)を設定し、評価項目に影響与える種々の交絡因子(年齢、性別、救急搬送時間、初診時血圧、体温、アシドーシス等)を抽出した。
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Strategy for Future Research Activity |
抽出したデータベース利用して、外傷性播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)が多臓器不全発症を通じてどの様に症例の予後に関与しているのかを解明予定であり、現在北海道大学病院自主臨床研究事務局に研究計画書を提出中である。 申請承認後速やかに研究を開始し、外傷後DIC診断の予後予測能力、DIC症例のアンチトロンビン値と予後の関係、単独頭部外傷における DICの意義、そしてトラネキサム酸使用症例のDICが予後に与える影響などを検討予定である。 研究成果は、日本救急医学会、日本集中治療医学会、日本外傷学会などで発表予定であり、さらに研究の参考にするために、これら学会に出席予定である。
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Causes of Carryover |
2020年はコロナ感染の蔓延、緊急事態宣言、さらにはコロナ感染対策の研究を優先せざるを得なかった事などにより申請研究計画の大幅修正と遅延を余儀なくされた事が理由である。 臨床研究用研究計画書作成の為のデータ抽出項目を設定し、診療録データベースからの項目抽出ソフトを開発したが、その経費として約50万円を使用予定である。
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Research Products
(25 results)