2022 Fiscal Year Research-status Report
水素豊富食塩水管腔内投与による小腸移植グラフト保存への新しいアプローチ
Project/Area Number |
20K09306
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中尾 篤典 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40648169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾迫 貴章 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (30573844) [Withdrawn]
石川 倫子 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40566121)
山田 太平 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (00465684)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小腸移植 / 粘膜バリア / 抗酸化作用 / 水素 / 虚血再灌流障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット小腸移植を使って研究は順調に進んでいる。これまでの臓器保存の研究では、主に血管を介して薬剤を投与する試みがなされてきた。腸管粘膜は最も虚血再灌流障害に弱い組織であり、治療のターゲットでありながら、管腔内投与の研究はあまり行われてこなかった。管腔内投与は直接的で手技的にも容易であり、本実験の成功は、大きく小腸移植の臨床での保存方法を変えることなく臨床応用できる可能性が大きい。 ラットを使った小腸移植モデルは、我々の研究室でこれまで使われてきたものであり、既に確立している。LEWISラットから全小腸グラフトをとり、これを6時間リンゲル液に冷保存するが、保存中、管腔内を洗浄したあとに水素を含む生理食塩水をグラフト粘膜面に注入することにより、虚血再灌流障害のターゲットである小腸粘膜に対し、抗酸化作用、抗炎症作用をもった水素を直接作用させることが出来る。 水素含有保存液の管腔内投与は組織学的にラット小腸グラフトの粘膜障害を劇的に改善し、Everted gut methodにより測定したバリア機能もコントロールに比べより保たれることが分かった。 水素分子が腸管のバリア機能、およびTight Junctionに及ぼす影響を調べ、透過性膜上に単層培養したCaco-2細胞を用いて、腸管上皮の物質透過が水素豊富培養液でどのように変化するか、モノカルボン酸トランスポーターやペプチドトランスポーターなどCaco-2に高発現しているトランスポーターに着目して調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験モデルは我々の研究室ですでに確立しており、基礎実験のdataもあったこと、また研究者は経験豊富でこれまで類似の研究を多く行ってきているが、COVID19感染拡大により十分な研究時間の確保が困難であった為、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、昨年度十分に実施できていない、これまでに得た凍結保存してあるサンプルを使って、メカニズムの検討に移っていく。炎症性サイトカインや粘膜バリア関連物質を中心に水素含有液の効果がどのシグナルに働くかを検討する。さらに、動物を長期間飼育して、短期間ばかりでなくその毒性や長期的な影響も調べ、臨床的な視点からも研究を継続する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのため、当初の予定通りには計画を遂行できず、想定より試薬等を安価に抑えることができたため次年度使用額が生じた。また、費用がかかる分子生物学的な検討をこれまでに得たサンプルを解析して行う計画であり、その費用に充当することを予定している。
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