2021 Fiscal Year Research-status Report
Mechanisms for the initial process of hair cell regeneration in avian inner ears
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20K09708
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 研究員 (50335270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯田 慶 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00387961)
喜多 知子 京都大学, 医学研究科, 研究員 (20362519)
西村 幸司 滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 嘱託研究員 (20405765)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 研究員 (50397634)
山本 典生 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70378644)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 感音難聴 / 有毛細胞 / 再生 / 分化転換 / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類とは異なり、鳥類の聴覚器官である基底乳頭では、有毛細胞再生が自発的に誘導され、聴覚機能も再生される。鳥類とは異なり、哺乳類では有効性が期待できるレベルの聴覚機能再生は報告されていない。近年、鶏に関する遺伝子情報が充実し、網羅的遺伝子解析手法を用いて、これまで困難であった鳥類における有毛細胞再生に関連する遺伝子およびシグナルの詳細な分子生物学的解析が可能となった。本研究では、鶏蝸牛器官培養系を用い、支持細胞から有毛細胞への直接分化転換による有毛細胞再生過程の網羅的遺伝子解析を行い、支持細胞の活性化メカニズム、活性化した支持細胞の細胞生物学的特徴、活性化支持細胞から有毛細胞への分化転換の分子機構の解明に関する研究を実施した。支持細胞の活性化については、発現変動遺伝子群のプロモーター領域におけるモチーフ解析から候補となる転写因子9つを同定した。また、単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析結果のpseudotime trajectory analysisを行い、支持細胞活性化に係わる候補情報伝達系を同定し、阻害薬実験を実施し、その役割を明らかにした。また、活性化した支持細胞に特徴的に発現する遺伝子群、分化転換初期段階にある支持細胞に特徴的に発現する遺伝子群を同定した。これらの結果は、哺乳類蝸牛での有毛細胞再生実現に向け、哺乳類蝸牛支持細胞の活性化誘導の推進、支持細胞から有毛細胞への分化転換効率化、新生有毛細胞の機能的な成熟誘導に関連するものであり、今後マウス蝸牛器官培養系での応用実験への展開を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度には、鶏聴覚感覚上皮における有毛細胞再生の初期過程における発現変動遺伝子群のプロモーター領域におけるモチーフ解析を継続して行った。経時的変化から分類した11クラスターの遺伝子変動が大きい17ポイントにおける上位25%の遺伝子を抽出し、各遺伝子のプロ-モーター領域に特異的に発現するモチーフを探索した。結果、9つの候補上流転写因子が検出され、マウス蝸牛発生に関連する遺伝子、Type I IFN JAK/STAT経路に含まれる遺伝子が含まれていた。これまでにATAC-seqによるオープンクロマチン領域の解析の予備実験を完了し、2022年度に本実験を行う。また、進捗状況は良好であり、概ね計画通に研究は進捗している。鶏聴覚感覚上皮における有毛細胞再生の初期過程の単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析結果のpseudotime trajectory analysisを行い、再生有毛細胞の起源となる支持細胞の活性化、活性化した支持細胞から有毛細胞への分化転換誘導に係わる新規情報伝達系候補を検出し、各情報伝達系の抑制効果検証を行った。これらの内一部の結果について、論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、鶏聴覚感覚上皮における有毛細胞再生の初期過程における支持細胞活性化機構、支持細胞から有毛細胞への分化転換過程に関して得られた新知見の裏取りとなる解析を進捗させ、論文化を推進する段階となる。また、鳥類で得られた一連の結果をマウス実験に応用するための、関連遺伝子発現に関する情報収集、新生マウス蝸牛での発現解析を行う。2022年度下半期には、マウス蝸牛器官培養実験系の確立し、標的遺伝子発現変化解析を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた学会出張がコロナ感染状況により、中止あるいはオンライン参加となったため、旅費執行がなくなった。また、2021年度内に論文投稿費を計上していたが、追加実験の必要性から2022年度に執行予定となった。
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Research Products
(3 results)