2020 Fiscal Year Research-status Report
エナメル上皮腫を引き起こす新しい分子基盤の解明とがんゲノム医療に向けた臨床応用
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20K09906
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 慎介 九州大学, 歯学研究院, 講師 (60452786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清島 保 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20264054)
自見 英治郎 九州大学, 歯学研究院, 教授 (40276598)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Arl4c / エナメル上皮腫 / BRAFV600E / 破骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはWntシグナルとEGFシグナルとの協調的作用によって発現する因子としてArf-like protein 4c (Arl4c)を同定した。加えて、ヒトがんにおけるArl4cの高発現に依存した細胞内シグナルは腫瘍形成に関わるだけでなく、がんの治療標的となりうることを明らかにした。また、口腔特有の腫瘍であるエナメル上皮腫に着目し、Arl4cが高発現することを新たに見出しているが、その機能は不明である。本研究では、エナメル上皮腫におけるArl4cの機能解析(腫瘍形成および破骨細胞活性化への影響)とArl4cを標的とする臨床への応用に向けたモデル動物を用いた検討を目的とする。令和2年度は以下の研究結果を得た。 ①Arl4cを高発現するヒトエナメル上皮腫細胞株においてCRISPR/Cas9法を用いてArl4cをノックアウトすることに成功した。これらの細胞株では腫瘍形成(運動能・増殖能)が抑制されていた。②ヒトエナメル上皮腫細胞株をマウスマウスから採取した骨髄細胞と骨芽細胞を共培養したところ、破骨細胞(TRAP染色陽性細胞)が形成された。③ヒトエナメル上皮腫標本においてArl4cの発現について検討したところ、80%弱の高頻度にて染色された。しかし、エナメル上皮腫において頻度の高いBRAFV600E遺伝子変異とは共局在しなかった。④ヒトエナメル上皮腫細胞株におけるArl4cの発現はBRAFV600Eには依存せず、Raf1に依存していた。 これらの結果から、エナメル上皮腫において、Raf1に依存して高発現するArl4cは腫瘍形成を促進することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでエナメル上皮腫におけるArl4cの発現と腫瘍形成への影響について詳細に解析されていなかった。令和2年度内の私共の研究結果から、Arl4cがエナメル上皮腫において高発現しており、その発現が腫瘍形成に関与している知見を得た。また、その発現制御機構の一端を明らかにした。 また、BRAFV600Eに依存しない、MAPKシグナルの活性化を示唆する結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
①エナメル上皮腫におけるArl4cおよびBRAFV600Eの発現と臨床病理学的な相関、ヒトエナメル上皮腫病理症例においてArl4cとBRAFV600Eの共 局在の有無について免疫組織学的に検討する。また、臨床病理学的な相関、再発の有無について検討することによって、Arl4cの発現が予後規 定因子となるか解析する。②エナメル上皮腫細胞株における抗腫瘍効果の検討 (in vitro実験系)、エナメル上皮腫細胞株において、SecinH3(Arl4cの下流シグナルを抑制する) 刺激、またはsiRNAによるノックダウンが増殖に与える影響について検討する。③新規エナメル上皮腫モ デルマウスの作製 (in vivo実験系)、ヌードマウスの顎骨内に歯科用エンジンで窩洞を作製し、この中にエナメル上皮腫細胞株を移植する。
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Causes of Carryover |
本年度の計画が終了したため次年度使用額が生じた。次年度に消耗品購入費として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)