2021 Fiscal Year Research-status Report
エナメル上皮腫を引き起こす新しい分子基盤の解明とがんゲノム医療に向けた臨床応用
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20K09906
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 慎介 九州大学, 歯学研究院, 講師 (60452786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清島 保 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20264054)
自見 英治郎 九州大学, 歯学研究院, 教授 (40276598)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エナメル上皮腫 / 破骨細胞 / Arl4c |
Outline of Annual Research Achievements |
エナメル上皮腫は歯原性腫瘍の中で最も発生頻度が高く、100万人あたり約0.5人が新たに診断されている。エナメル上皮腫は歯原性上皮由来の良性腫瘍であるが、再発したり、しばしば広範に顎骨吸収を呈するため、臨床的にも重要な腫瘍として考えられている。しかし、その病因は不明であった。最近、エナメル上皮腫においてBRAF V600E変異に依存したMAPKシグナルが異常に活性化していることが報告されたが、細胞増殖や顎骨吸収における機能は不明であった。 本研究において、ヒトエナメル上皮腫の病理組織標本において免疫染色を行ったところ、73%の症例においてARL4Cがエナメル上皮腫細胞特異的に染色された。これまで、ARL4CはMAPKシグナルにより発現制御され、各種の癌において腫瘍形成を促進することが報告されている。そこで、BRAF V600E変異を有するエナメル上皮腫細胞株を用いた検討したところ、ARL4Cの発現は、BRAF V600E変異単独のシグナル伝達活性化には依存せず、主にRAF1-MAPKに依存していることを見出した。この結果から、エナメル上皮腫において、BRAF V600E-MAPKシグナルだけでなく、RAF1-MAPK-ARL4Cシグナルが活性化していると考えられた。また、ARL4Cの発現はエナメル上皮腫の腫瘍細胞増殖に必要であった。次に、エナメル上皮腫細胞がARL4Cを発現している病理組織標本において、多数の破骨細胞が認められた。そこで、マウス骨芽細胞と骨髄細胞の初代培養にエナメル上皮腫細胞を共存培養したところ、エナメル上皮腫細胞におけるARL4Cの発現量に依存してTRAP染色陽性の破骨細胞様細胞が形成された。加えて、この実験系において、mRANKLを介してTRAP陽性細胞が誘導されていた。以上の結果より、エナメル上皮腫におけるRAF1-MAPKシグナル依存性のARL4C発現はエナメル上皮腫の腫瘍細胞増殖と破骨細胞形成に必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エナメル上皮腫においてBRAF V600E変異に依存したMAPKシグナルが異常に活性化していることが報告されているが、細胞増殖や顎骨吸収における機能は不明であった。本研究結果から、低分子量Gタンパク質であるARL4Cがエナメル上皮腫に高発現しており、その発現がエナメル上皮腫の腫瘍細胞増殖および破骨細胞形成を促進することを見出したため、おおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
エナメル上皮腫が間質細胞を介して、破骨細胞の活性化を促進することが明らかとなったがそのメカニズムは不明である。特に、Arl4cを発現するエナメル上皮腫細胞がRANKLの発現を誘導するメカニズムは不明である。今後はそのメカニズムを明らかにするために、新たな実験系を作成することを企図している。
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Causes of Carryover |
次年度において、エナメル上皮腫が破骨細胞形成に与える影響について検討することを計画しており、この物品費に充てることを計画しているため。
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Research Products
(8 results)