2021 Fiscal Year Research-status Report
Sprouty2 による上皮間葉転換制御を介した扁平上皮癌転移抑制機構の解明
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20K10173
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 講師 (10553290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
讃井 彰一 九州大学, 大学病院, 講師 (70507780)
福田 隆男 九州大学, 大学病院, 講師 (80507781)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 / TGF-β シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、ヒト骨芽細胞株として用いたSaOS-2において、human SPROUTY2をはじめとするSPROUTY/SPRED ファミリーのmRNAがFGF刺激で誘導されることを確認できたため、そのファミリーの中でもmRNAの発現が強く誘導されたSPROUTY2とSPROUTY4について、タンパク質レベルでの発現を調べた。その結果、SPROUTY4においてはEGF刺激およびFGF刺激で、そのタンパク質レベルでの誘導に差はなかったが、SPROUTY2ではmRNAの結果と同じく、EGF刺激よりFGF刺激での誘導の方が強く誘導されていた。次に、 細胞増殖におけるSPROUTY2の機能を調べるため、WST-8アッセイを行った。その結果、FGF刺激48時間後からSPROUTY2を強制発現した細胞の方が、その増殖能が抑制されていた。今後、この細胞増殖に差が出た原因に関して、細胞内シグナル伝達を中心に解析を進める予定である。 一方、上皮間葉転換の観点から、各種学会・研究会に参加することで新たな切り口となるべく知識を深めることができた。口腔扁平上皮癌を制御する新たな治療薬として抗PD-1抗体があるが、このPD-1の細胞内で免疫学的シナプスが形成されると、PD-1のITSM部位にSHP-2が動員され、PI3K、AKT、RASが脱リン酸化されて細胞内シグナルが減衰する。このオプジーボの作用機序が SPROUTY2を介した細胞増殖シグナルの制御に直接的に応用できる。すなわちRASや AKTを介したPD-1とSPROUTY2との関連性から、癌細胞のみでなくT細胞をはじめとする免疫細胞の細胞内に発現するSPROUTY2による上皮間葉転換制御機構が癌増殖・転移機構の抑制に関わる可能性が考えられ、今後の研究のアプローチの 1 つとして考えることができると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、過去にマウスの実験で報告のあった事象を human の細胞や human のベクターなどを用いて再現できるかを確認するとともに、細胞の走化性・浸潤能を調べる目的で Wound healing アッセイなど新たな実験も試みたが、細胞の種類が実際の扁平上皮癌細胞株ではなく、基礎実験において用いた SaOS-2であったことに起因するのか詳細は不明であるが予想した結果は得られなかった。また、購入した抗 Sprouty2 抗体の非特異的な染色があり、染色条件を再度検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
過去にマウスの実験で報告のあった事象が human でも再現できるかは、本研究の根底をなす事項であるため、human の細胞やhumanのベクターなどを用いて再現できるかを早急に確認する。またそれと同時に、口腔癌の患者の組織染色で、Specificに染色される抗SPROUTY2抗体を絞り、組織染色で転移性がんと非転移性がんで染色の違いを調べる。また、上皮間葉転換にはTGF-βシグナルが深く関わっており、human SPROUTY/SPREDファミリーは MAPK 経路や PI3K-Akt経路の制御因子であることは分かっているが、TGF-β-Smad経路での作用は確立されていない。これを in vitro の実験系で確認するとともに、免疫組織染色でも、Smadシグナルの活性化をSPROUTY2の発現量と比較しながらその活性度を比較検討する。
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Causes of Carryover |
予備実験や病理組織学的実験においては、これまで使用してきた実験器具を使用することができたため、新たな器具を購入するのを回避できた。抗体に関しては human と交差性のある murine の抗体を使用できるものはそれを使用した。ただ、 non-specific な染色も多く、今後は新たな抗体を購入する必要があると考える。今後はタンパク質の発現を中心とした解析に入るため、基金であることを生かして必要な試薬や細胞培養試薬を中心に、計画的に使用する予定である。また、コロナ禍で学会参加などオンデマンドでの参加が主体となったため、旅費の使用は抑えることができた。しかしながら、実際現地に参加して発表を聞いたり意見交換をする意義は非常に重要なため、今後そういった場にも直接足を運ぶことが必要になると考える。
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