2022 Fiscal Year Research-status Report
Sprouty2 による上皮間葉転換制御を介した扁平上皮癌転移抑制機構の解明
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20K10173
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 准教授 (10553290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
讃井 彰一 九州大学, 大学病院, 講師 (70507780)
福田 隆男 九州大学, 大学病院, 講師 (80507781)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
扁平上皮がんを制御する新たな治療薬として抗 PD-1 抗体(オプジーボ)があり、この PD-1 の細胞内シグナル伝達機構として免疫学的シナプスが形成されると、PD-1 と PD-L1 のライゲーションにより、PD-1 の ITSM 部位に SHP-2が動員され、PI3K、AKT、RASが脱リン酸化されて細胞内シグナルが減衰する。SPROUTY2 はSHP-2と同じく、RAS や PI3K を介した AKT 阻害因子として広く知られており、オプジーボの作用機序が SPROUTY2を介した細胞増殖シグナルの制御に応用できる。このことから、本年は、RAS-MAPK 経路および PI3K-AKT 経路における SPROUTY2 の作用を調べた。Western blot 解析の結果、線維芽細胞増殖因子 (bFGF) による刺激で活性化する ERK1/2 が SPROUTY2 の存在によりその活性化が抑制されており、また、AKT の活性化も SPROUTY2 が抑制していた。 一方、同じ RTK シグナルを誘導する上皮増殖因子 (EGF)で刺激を行うと、SPROUTY2 の存在により ERK1/2 の活性化が増強するのに対し、AKT の活性化は SPROUTY2 の存在下では bFGF 刺激時と同様に抑制される結果となった。また、本実験では悪性腫瘍として骨肉腫の細胞株 SaOS-2 を使用していたことから、骨分化マーカーの誘導にSPROUTY2 がどのように作用しているかを Real-time PCR 法にて調べた。その結果、骨分化マーカーである RUNX2 と ALP の誘導が SPROUTY2 により誘導抑制をされていた。このことから、オプジーボ同様に SPROUTY2 が PI3K やRAS 経路を介する癌細胞の増殖抑制に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Western blot 解析の際、内在性の ERK1/2 および AKT のリン酸化 の影響を除去する目的で培養液の血清を除去したものでスタべーションを行い、増殖因子の刺激を加えない time 0 の時の ERK1/2 および AKT のリン酸化を検出しないようにしたが、この条件を検索するのに時間を要した。また、リン酸化の強弱についても使用する血清のロットが変化すると、同じ再現性が取れなくなったこともあり、再現性の獲得に通常以上の時間を要したことが遅れの一因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
SPROUTYファミリーはこれまで RTK シグナルの下流でネガティブフィードバック因子として作用することが知られていたが、 ヒトTGF-βシグナルにおける作用は不明である。TGF-βシグナルは、癌の浸潤に深く関わっており、特に線維芽細胞の形質転換に関与するため、癌が浸潤・転移をする際の上皮間葉転換に影響を与えることが報告されている。そのため、ヒトTGF-βシグナルにおける SPROUTY2 の作用を生化学的・分子生物学的手法を用いて上皮間葉転換におけるSPROUTY2の働きを解析し、また、それによって誘導、転写される mRNA についても解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
これまで使用してきた実験器具を使用することができたため、新たな器具を購入するのを回避できた。ただ来年度に新たなシグナル伝達系である TGF-β関連の試薬を購入しなければならないため、次年度使用が生じた。また、コロナ禍で学会参加など参加する数を限定的にしたため、旅費の使用は抑えることができた。しかしながら、多くの分野の学会に参加して発表を聞いたり意見交換をしたりすることは非常に重要なため、今後は海外も視野に多くの関連学会に参加することが必要になると考える。
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