2023 Fiscal Year Research-status Report
Sprouty2 による上皮間葉転換制御を介した扁平上皮癌転移抑制機構の解明
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20K10173
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 准教授 (10553290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
讃井 彰一 九州大学, 大学病院, 講師 (70507780)
福田 隆男 九州大学, 大学病院, 講師 (80507781)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
トランスフォーミング増殖因子(以下 TGF-β)はもともと線維芽細胞の形質転換を促進する因子として発見されたが、その後の研究でとくに癌細胞の細胞増殖や分化、アポトーシス制御などに関わっていることが明らかになっており、扁平上皮がんの転移機構と深く関わっている上皮間葉転換(以下 EMT)においても、重要な役割を果たしていることが示唆されている。 本研究で焦点を当てている Sprouty ファミリーにおいても、Sprouty1 が TGF-β シグナルを抑制することが報告されているが、器官発生における制御機構であり、ヒトの癌細胞における研究報告はない。そのため、本研究では今年度 EMT 制御の観点から、ヒト癌細胞において SPROUTY2 が TGF-β シグナルに与える影響について解析した。昨年度の予備実験で癌細胞として骨肉腫の細胞株である SaOS-2 細胞を用いていることから、今回もリガンドは TGF-β スーパーファミリーの BMP2 を用い、SPROUTY2 の SMAD のリン酸化制御を Western blot 法にて調べた。その結果、SPROUTY2 の存在下で SMAD1/5/8のリン酸化が抑制されており、SPROUTY2 が TGF-β シグナルを抑制することで EMT 制御をしている可能性が示唆された。 また、BMP2 によって誘導される転写因子を Real-time PCR 法で解析したところ、骨代謝マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)、オステリックス(OSX)、オステオカルシン(OCN)の発現が SPROUTY2 により抑制されていた。これらの結果から、口腔癌など扁平上皮癌が顎骨などへ骨浸潤する際も、SPROUTY2 がその制御に影響する事が示唆され、分子標的薬や遺伝子治療において有用なターゲット分子であることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Time course により Western blot 解析を行ったが、SMAD1/5/8 のリン酸化に適した時間間隔を見いだすのに時間を要した。また内因性 SMAD1/5/8 の影響を排除するため、血清フリーの状況を作る必要があったが、その条件を検索するのにも時間を要した。また、リガンドである TGF-β が失活しやすく、同じ再現性が取れなくなったため、リガンドを BMP2 に変更しておこなったこともあり、再現性の獲得に予想以上の時間を要したことが遅れの一因となった。また、細胞浸潤の解析として、Wound healing assay を行ったが予想した結果は得られず、並行して Chamber 式の解析キットを用いた遊走解析などを取り入れて解析すべきであった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で SPROUTY ファミリーは RTK シグナルの下流でネガティブフィードバック因子として作用するのみでなく、 ヒト TGF-β シグナルにおいてもそのシグナルを負に制御することが明らかになったことから、実際の現象として上皮間葉転換による細胞の遊走性に影響を及ぼすことを示す必要がある。すなわち、SDS-PAGE のバンドや Real-time PCR 法による数値の解析から、実際に目で見える現象をとらえる解析を行いたいと考えている。これは Ras-MAP キナーゼ経路や TGF-β シグナルで誘導、転写される mRNA を介した現象も目で見える形で SPROUTY2 の作用を解析したいと考えている。 来年度が研究期間の最終年度なので、ほとんどが in vitro の結果になってしまっているが、これまでの結果をまとめて学会発表や国際雑誌に発表すべく論文作成にも時間を費やしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、本年度行った実験系ではこれまで、マウスの Cell-line で行った実験と同じく、ヒトの Cell-line での実験系であったため、抗体など交差性を有する試薬は購入を控えることができた。また同じく使用してきた実験器具を引き続き使用することができたため、新たな器具を購入するのを回避できた。また、進歩状況がやや遅れていることから、当初予定していた実験が次年度に繰り越さざるを得ない状況になっており、実験を来年度に持ち越す結果となったため、それに伴って次年度使用が生じることになった。来年度は最終年度であるため、完了できなかった実験を効率的に遂行する費用に充てるとともに、これまでの結果を広く学会にて発表したり、オープンアクセス誌(国際雑誌)への投稿を考えたりしているため、英文校正や投稿料などで使用する予定である。
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Research Products
(2 results)