2021 Fiscal Year Research-status Report
複雑な乳歯根管系の制御-歯根外部吸収への修復機構の誘導と歯根安定の獲得-
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20K10197
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八若 保孝 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (60230603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 光一 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (50580932)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳歯 / 根管治療 / 水酸化カルシウム製剤 / pH / 歯根吸収 / セメント質 / 根管洗浄 |
Outline of Annual Research Achievements |
根管治療において、根管内壁に生じるスミア層の除去が重要で、根管貼薬剤の効果を根管、根管内壁、象牙細管を通しての根管歯質、歯根外表面へ有効に拡散させることができる。これまでに、根管洗浄として、有機質溶解作用のある次亜塩素酸ナトリウムを使用した超音波洗浄が、乳歯ではスミア層除去に有効であること、永久歯では、硬組織脱灰作用のあるEDTAを使用した超音波洗浄を加えることで、適切なスミア層除去ができることを示すことができた。 適切なスミア層除去により、根管貼薬剤である水酸化カルシウム製剤の効果が歯根外表面にまで拡散することが示され、前述した根管洗浄法が、複雑な乳歯根管系の制御の最も重要な点であることが把握された。 根尖性歯周炎の治療は、炎症のコントロールと病的歯根吸収のコントロールの両面での対応が必要である。根尖性歯周炎は、超音波を用いた根管洗浄により貼薬剤の効果が有効に発揮され、炎症のコントロールの確実性が増加した。歯根吸収においては、前述の有効な根管洗浄により、吸収を示す歯根外表面へ象牙細管を経由した水酸化カルシウムのアルカリ性の拡散が生じる。これにより、酸性環境が必要な歯根吸収部を中和させることができ、歯根吸収抑制の可能性が高くなる。事実、臨床においてこの方法を行うことで、多くの症例で歯根吸収を止めることができた。 歯根外表面の吸収部については、これまでの組織学的検索で、セメント質添加による形態的修復が生じることがあることが報告されている。しかし、どのような環境下で、なにがトリガーとなって、セメント質添加が生じるのかは解明されていない。細胞培養系および実験動物系の2系統を用いて、この点を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験動物系では、ラット第一臼歯の再植を応用した歯根外部吸収を惹起させる方法(歯根外部吸収モデル)を構築することができた。ラット第一臼歯歯根吸収に対する水酸化カルシウム製剤の効果を組織学的に観察し、水酸化カルシウム製剤の効果により、歯根外部吸収は抑制されること、セメント質の肥厚(添加)が観察されることを明らかにすることができた。 細胞培養系の実験については、計画に比較してやや進行が遅れている。歯根吸収モデル作製が律速段階であり、この段階に時間と労力が必要となっている。担当する予定であった大学院生が諸事情により参加できなかったため、この部分の進行が遅れていた。加えて、歯根吸収モデルの再現性にばらつきが認められた。よって、モデルの改編も視野に入れて検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験動物系において結果が得られたため、遅れている細胞培養系の研究を中心に進めていく予定である。担当予定の大学院生が本年度やっと参加できる目途が立ったことにより、大学院生二人の協力を得て、計画的に進めていく。歯根吸収モデル作製ならびに再現性についての障壁を乗り越えて、今後の細胞培養系の実験を遂行する。細胞培養系で得られた結果と、これまでに得られたヒトでの各種根管洗浄法の結果、ラットを使用した実験動物系での結果を合わせ、本研究をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う国内ならびに国際学会が中止もしくはWebでの開催になったことにより、旅費の支出がほぼ“0”になった。また、本研究に参加予定の大学院生が、諸事情から研究参加が困難となり、予定していた謝金支出が一人分(二人分を予定)になった。新型コロナウイルスの影響は世界的に続いており、旅費に関する支出は予定ほど大きくならない状況である。これまでの予定していた旅費と合わせての財源を研究の充実に使用することを含め、今年度は、昨年度まで参加ができなかった大学院生の参加の見通しが立ったため、大学院生二人への謝金支出が実施できることから、研究費を適正に使用予定である。
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