2020 Fiscal Year Research-status Report
Masticatory muscle fatigue observed by diffusion tensor imaging in jaw deformity patients
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20K10208
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北原 亨 九州大学, 大学病院, 講師 (00274473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯浅 賢治 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 客員教授 (40136510)
飯久保 正弘 東北大学, 歯学研究科, 教授 (80302157)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 咀嚼筋疲労 / 骨格筋拡散テンソル画像(DTI) / QOL(Quality of Life) / 顎変形症患者 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋疲労の分子メカニズムはホメオスタシス(恒常性)の低下現象であると言える。骨格筋のオーバーワークは細胞内の様々な機能分子が酸化されるという事態が起こり,急性疲労から亜急性疲労へと移行し,慢性疲労症候群のような厳しい疲労から抜け出すことが困難となることもありえる。 咀嚼筋疲労は医療のエンドポイントである「生活の質の向上」に大きく関わっている。咀嚼筋の筋活動量だけでなく,その活動比率や左右の均衡性などに変化が生じると考えられる。咀嚼筋疲労は患者の訴える疲労感や疼痛強さ等から判断され,客観的かつ定量的な評価法は乏しく,生理学的情報と生化学的情報が統合された診断法の確立は急務である。 骨格筋細胞の適応現象を分子レベルで画像化し,その分子機構を解き明かそうという試みが活発に行われている。MRIによる骨格筋拡散テンソル画像(DTI)は,三次元的に筋線維構造を描出可能で,より詳細な筋構造情報を咀嚼筋疲労診断へ反映できる可能性があると考える。 顎変形症患者対象の拡散テンソル分析を咀嚼筋疲労の評価に適用した研究は見当たらない。健常者を対象とした報告(Shiraishi T et al. Acta radiologica 2012)はあるが,咀嚼筋疲労からの回復期を検討したものではない。本研究では顎変形症患者の咬筋を被験筋と考えており,骨格筋DTIの高い空間分解能による実験的持続咬みしめ前後の両咀嚼筋の見かけの拡散係数(ADC)は一過性上昇を示すかを検証する。 令和2年度は、予備実験として骨格筋拡散テンソル画像(DTI)を用いた健常被験者によるデータの解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
緊急事態措置期間(1回目・2回目)ならびに 令和2年10月に行われた研究協力施設MR撮影機器変更(1.5Tから3Tに変更)後の撮影条件の確認作業の影響が考えられる。 これまで、大腿四頭筋など大きな断面積を有する骨格筋においては、患者にとって侵襲のない検査法である拡散テンソルイメージング(DTI)による、分子イメージングがおこなわれてきており、本研究では、比較的断面積の小さい咀嚼筋(咬筋)においても、分子イメージングによる新たな画像診断手法が妥当であるかを検証し、咀嚼筋疲労診断法確立をめざす。 本研究対象である顎変形症患者の咬筋および外側翼突筋を被験筋と考えており,骨格筋DTIにより高い空間分解能による実験的持続咬みしめ前後の両咀嚼筋の見かけの拡散係数(ADC)は一過性上昇を示すかを検証する。加えて,高い時間分解能を有する31P-MRSにより,持続咬みしめ前後の高エネルギーリン酸化合物の一過性変化を検証する。 骨格筋DTIおよび31P-MRSを用いて,水分子の見かけの拡散係数、高エネルギーリン酸化合物を簡便かつ非侵襲的に測定することによって,QOLを著しく低下させると考えられる咀嚼筋疲労を正確に診断するシステムの確立,ならびに,咀嚼障害が顎口腔系に及ぼす影響を明らかにするべく、以下の作業仮説を設定した。仮説1:治療前のDTIにおいて,持続かみしめ前後の咀嚼筋のADCは一過性に上昇する。仮説2:下顎前突を伴う顎変形症患者の治療後のDTIにおいて,ADCは治療前に比べ減少を示す。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的実験結果の評価より、骨格筋DTIに関するトラブルシューティングとして,安定した高信号の取得が困難な場合は、チンネックバンドなどによる下顎骨の固定を併用し,加算回数を増加(加算回数2から17 回)して描出能の向上対応を行うこととした。 1.直径10cm表面コイルを用いることで高信号を得ることができ, 描出能も適切であった. 2.加算回数を増加するほど描出能は向上するがその分撮像時間も長くなる. 加算回数は15回が適切と思われた。3.T1WやB-TFE画像をROI設定画像とすることは、筋の走行を把握するうえで適切であると思われた。4.拡散強調画像の撮像条件は、b factor : 0、300, 600 s/mm2を用い、拡散をエンコードする motion-probing gradient (MPG) は、前後(PA)、左右(RL)、上下(SI)の3 軸を用いた。各方向での拡散係数ADC-PA, ADC-RL, ADC-SIを算出する予定。 骨格筋のADCに関しては,運動前後で変化することが報告されている。定常状態の変化として,収縮中の筋では筋線維が太くなるため,収縮中はλ1が減少してλ3が増加するとされている。一方,伸展では,逆にλ1が増加しλ3が減少すると報告されている。ADCとT2時間(横緩和時間)は,運動前に比べ運動直後増加し,20分の観測の間に徐々に回復することが観測され,正の有意な相関を認めたとの報告もあり1)、咀嚼筋骨格筋DTIにより、比較的断面積の小さな咬筋においても、分子イメージングによる新たな画像診断手法が妥当であるかを検証する予定である。
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Causes of Carryover |
臨床倫理審査委員会受審と被験者のリクルートが次年度以降に予定されているため。
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