2021 Fiscal Year Research-status Report
Multifaceted study between health condition and agricultural life in elderly dwellers
Project/Area Number |
20K11123
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野瀬 光弘 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携研究員 (00568529)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 健康診断 / 総合機能評価 / 農業生産活動 / 地域の実態把握 / 実務と実践のサポート / 作物のおすそ分け / 農作業への姿勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も新型コロナウイルス蔓延の影響は非常に大きく、開催予定だった高知県土佐町在住の75歳以上の高齢者を対象とした健康診断(健診)が中止となった。引き続き、現地へ足を運ぶことができなかったため、代わりに土佐町内で2016年に健診を受けた人の詳細な情報把握を目的に、石原地区在住の人に電話で聞き取りを行い、現在持っている情報の整理を合わせて実施した。同地区は2018年時点で人口は329人(男性:165人、女性:164人)、高齢化率50.5%(男性:44.2%、女性:56.7%)で、町内平均(44.3%)に比べるとやや高齢化が進行していた。農作業の有無をみると、サンプル数が少ないために参考にとどまるが、社会的役割と主観的健康度の2項目で農作業をしていない人に比べてしている人のほうが有意にスコアが良好だった。このうち社会的役割は、土佐町全体の健診受信者と同様の傾向が認められていたが、背景としては石原地区特有の個別事情があげられる。すなわち、同地区には地域おこし協力隊など移住者が毎年のようにいて、おすそ分けがよく行われているほか、毎月1回は地区の人が集まって直売所を会場とした「やまさとの市」が開かれ、町内外から多くの人が来訪している。社会的役割の質問項目に含まれている「友だちの家を訪ねることがありますか」「若い人に自分から話しかけることがありますか」に「はい」と答えた人は、こうした機会に恵まれていると考えられる。また、2017年の健診データを用いて農作業の有無とその楽しさについて分析を加えた。農作業をしていない人が約20%だったのに対して、農作業していて楽しい人は男女とも約60%を占めていた。農作業していて楽しい、同楽しくない、同していないの3区分による分散分析では、男性と女性の両方ともQOLの健康状態などで群間の有意差が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究で対象としている高齢者は、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクが高いこともあり、2021年度も引き続き対面での聞き取り調査を実施する状況にはならなかった。緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の合間に足を運ぶ機会を設定しようとしたが、所属している研究機関において県境をまたいでの移動自粛が求められており、断念せざるを得なかった。代わりに、土佐町内の地区ごとの特徴を浮き彫りにするために、2016年における石原地区の健診データを抽出、解析した。その結果、石原地区の持つ個別事情が反映して農作業をしている人の心身の健康状態に良好な影響を与えていることが推察された。また、2017年の健診データをもとに、農作業への姿勢についての統計的な分析を行ったところ、農作業が楽しくない人に比べて楽しい人のほうが特に心理的な健康状態のスコアが良い傾向が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染状況など次第で状況は不確定な要素は残るが、毎年8月に行われていた75歳以上の高齢者を対象とした健康診断は別の形での開催することになった。協力が得やすい石原地区の高齢者(健診の受診者)を対象に、子どもの頃の周辺環境と遊び、学校時代の活動、農作業を始めたきっかけ、作付け作物の選択と投入資材、作物の販売とおすそ分け、地域活動と行事への参加状況・役割、親族・地域住民との交流状況、生活習慣などを聞き取りによって把握する。これらの項目と過去の健診結果との関連性を統計的に量と質の両面から解析する。また、農作業と作物の取り扱い(販売とおすそ分け)について2016年と同様の質問を2019年のアンケート項目に記載しており、運動機能、基本的日常生活機能、認知機能、老研式活動能力指標、心理状態、生活満足度の3年間の変化量との関係性を統計的に分析することで、心身の健康度合いとの結びつきを様々な角度から考察する。
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Causes of Carryover |
高知県土佐町で開催予定だった健康診断が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となったうえに、現地での聞き取り調査ができなくなったため、旅費や人件費・謝金を計上することはなかった。2022年度も当初8月に開かれる予定だった健康診断は中止される予定となっており、現地住民の協力を得て聞き取り調査も含めて旅費と交通費などを使うよう計画している。
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Research Products
(1 results)