2023 Fiscal Year Research-status Report
物体の運動予測特性を考慮した視覚トレーニングの開発
Project/Area Number |
20K11425
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
新井 健之 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (20397095)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 視覚トレーニング / 注意配分 / 運動予測錯覚 / 運動予測 / 動作の自動化 / ゴルフ / 運動認知 / 運動錯覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、対象物への注意配分により変化する運動予測特性を考慮した視覚トレーニングの開発である。それにより、飛躍的な視覚トレーニング効果の向上が期待できる。報告者は、対象物への注意配分変化により、対象物の運動予測が変化する運動予測錯覚を発表している。その知見は視覚トレーニングの開発に、対象物への注意配分変化という状況変化が、トレーニング効果の効率化に不可欠である可能性を示唆している。また、戦略トレーニングなどへ応用も期待できる。そして、動作の自動化により影響が減ることから、トレーニング熟練度評価への応用などの可能性を示している。 2023年度は、運動物体の予測特性の男女比較について研究を進めた。日本体育・スポーツ・健康学会では、大学生における運動物体の予測特性の男女比較と題して発表を行った、また、認知予測研究会を科研費補助により12回開催し、ボール落下の予測と注意の関係や認知予測特性の男女差について議論した。 大学生における予測特性の男女比較では、見越距離短縮錯覚(発表内では予測速度)では有意差がなかったが、位置錯覚量において有意差が認められた。これまでの研究で、進行方向への位置錯覚量は、運動物体が消失した際の位置が、実際よりも進行方向側にずれて見える錯視現象RM(Representational momentum : 表象的慣性、Freyd & Finke, 1984)との関連を指摘している(新井2014)が、追跡眼球運動により、錯覚量が増加する(Kerzel 2000)ことから、この結果には、追跡眼球運動における位置錯覚量の男女差が予測特性に影響する可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目的である、対象物への注意配分により変化する運動予測特性を考慮した視覚トレーニングの開発には、物体の運動予測特性の解明が必要不可欠であり、本研究期間内で行う予定である。2023年度は、2022年度に引き続き、2020年度からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大による影響で、研究計画実行が滞ったままである。 しかし、研究遂行を行う上で大きな問題が2点あったが、その内の1点である被験者の確保には明るい兆しが見え一部実験を再開できている。ただ、実験統制の重要な部分である、「不要な注意分散を避けるための閉鎖空間」は感染症対策のために確保出来ておらず、今後とも折り合いを付ける必要がある。2点目の議論の場はZOOMにより確保出来ているものの、対面のような議論効率は見込めいないのが現状である。2024年度は他の学会に習い、認知予測研究会も対面再開を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2020年度から引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響により、研究遅延が生じた。2023年度は2022年度までに比べこの影響が減った。しかし、今後の動向は予測不可能である。その為、2024年度は、影響が2023年度と同程度残ると仮定し研究の推進方策を行う。コロナ禍の影響を受けた点は2点ある。1点目は、研究発表等、議論を行う場の確保である。2点目は、実験の実施に関わる場や被験者の確保である。 1点目の研究発表等、議論を行う場の確保では、対面が再開された日本ゴルフ学会の理事会に働きかけ、学会大会の対面の維持を目指す。また、日本体育・スポーツ・健康学会や複数の研究会では対面での開催が予定されていることから、会場での議論を進める。2019年に科研費を利用し立ち上げさせて頂いた認知予測研究会も、徐々に参加人数を増やし、分科会単位で活動が行えるようになってきている。科研費を利用させて頂き、遠隔や対面での研究会開催を行う予定である。そこでの議論の成果を、より多くの研究者と議論するために、参加人数が多い、日本体育・スポーツ・健康学会、日本ゴルフ学会などで発表を行う予定である。また、今までの研究成果をまとめた講演や論文の依頼を積極的に受け、一般の方に広く研究成果を公表する。 2点目の実験の実施に関わる場や被験者の確保では、感染症対策が円熟してきた大学の学生を対象にした実験を、統制条件を緩めて実施し、学会発表する予定である。また、過去の実験データの解析も進め、運動予測特性の男女差の解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、実験場所や被験者の確保が困難であったために研究の遅延が生じた。2023年度に新型コロナウイルス感染症の扱いが5類に引き下げられたことにより、被験者の確保が今までよりも容易になる予定であったが、現状は厳しく、予定の確保には至らなかった。 次年度は、注意配分を操作したゴルフのコントロールショットの実験やテニスのレシーブ実験、VR環境を使用した運動物体予測特性の性差の検討などを計画している。学会発表は、日本体育学会、日本ゴルフ学会を予 定している。以上のような実験経費や学会・研究会経費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)