2020 Fiscal Year Research-status Report
加算無限個のシェアを生成可能な秘密分散法の効率化と秘匿計算への応用に関する研究
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20K11819
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
澁谷 智治 上智大学, 理工学部, 教授 (20262280)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 秘密分散 / 発展型k-しきい値秘密分散法 / ラグランジュ補間 / 符号化計算 / 秘匿計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
次項「現在までの進捗状況」において説明する理由から、当初予定していた2020年度の研究計画のうちのいくつかについては十分な研究成果が得られていない。一方、2021年度以降の研究計画の予備検討として行った研究については、今後の研究を進めるうえで有益な知見が得られている。以下にこれらをまとめる。 まず、発展型k-しきい値秘密分散法のシェアサイズについては、Komargodskiらの手法に関する再検討を行い、シェアサイズのより精密な定式化を行った。また、最近の関連研究を調査し、Komargodski らの手法とシェアサイズの比較を行った。しかしながら、発展型k-しきい値秘密分散法における (1)シェアサイズとkとの関係の解明(課題1)や (2)シェアサイズの削減(課題2)には至らなかった。 一方、本研究の学術的背景に述べた「データを暗号化してデータ解析者に提供し、暗号化されたままでデータを解析するための基礎技術(秘匿計算)」の実現を見据えて、Yuらによる「ラグランジュ符号化計算法」と呼ばれる秘匿依頼計算アルゴリズムについて調査を行った。これは、ラグランジュ補間多項式の性質を利用して、自身の保持するデータを暗号化した上で複数の他者(Workerと呼ばれる)に処理を依頼し、その計算結果の提供を受けることで自身のデータ処理を高速に行うものである。 これについて、(1)データだけでなく処理内容も秘匿する、(2)Workerをいくつかのグループに分け、グループ内で不正な処理を行う Worker 数が一定数を超えない限り、処理の正しさを保証する、の2条件を同時に満たす方式を開発した。Komargodski らの手法においても利用されているラグランジュ補間法の新たな活用法を与えるものであり、発展型k-しきい値秘密分散法を用いた秘匿演算の実現(課題3)の解決の糸口となりうるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大の影響を受け、2020年度は、大学の授業がすべてオンラインでの実施となった。このため、すべての授業をオンライン対応にするための準備に多大な時間を要し、本研究課題を申請した際の2020年度のエフォート(35%)の確保がほとんどできなかった。また、本研究課題に共同で取り組む予定であった大学院生の研究指導も大きく影響を受け、十分な指導が困難であった。このような状況下で、当初予定していた2020年度の研究計画に関しては、十分な達成度を得ることができなかった。 しかしながら、2021年度以降の研究計画の予備検討として行った研究については、前項の「研究実績の概要」に述べたように一定の成果が得られた。 以上を総合的に評価して、(3)やや遅れている、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に予定していた3つの計画、(1)シェアの生成に有限体の拡大体を利用した際のセキュリティ上のリスクに関する検討、(2)シェアサイズに関する限界式の定式化、(3)シェアサイズの削減の実現、については、前述のように十分な成果が得られていない。そこで、2021年度おいてはこれらについて再度取り組む。 また、2021年度以降に予定していた2つの計画のうち、(4)秘匿計算法の開発、については、2020年度の予備検討をさらに発展させ、より効率的な手法の開発に取り掛かる。その際、2020年度の予備検討を発展型k-しきい値秘密分散法のシェアサイズの解析(上述の計画(1)-(3))にも応用できないか、併せて検討する。 もう一つの計画である、(5)機密データが復元できる条件の拡張とそれに対する発展型秘密分散法の開発については、研究計画の遅れから現時点では具体的な方向性が見えていない。そこで、本計画に対する予備的な検討も2021年度に行う予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大の影響により、(1)出席を予定していた学会・研究集会がオンライン開催となったため、これらに出席するための出張旅費の支出がなかった、(2)研究計画の遅れから、研究成果の論文等への投稿がなかった、ことにより、次年度使用額が生じた。 これらの次年度使用額は、(i)シミュレーションに利用する計算機の購入、および(ii)国際会議の参加登録費、として使用する予定である。 半導体需要の世界的な高まりによりCPUやメモリといった計算機の部品が高騰しており、2021年度に計上した額では十分な性能の計算機の購入が困難となることが予想される。そこで、次年度使用額を使用することによって十分な性能の計算機の購入を図るのが(i)である。また、2020年度と同様、2021年度も国際会議の現地開催が困難な状況が続くものと予想される。その一方で、オンライン開催の国際会議数は飛躍的に増えており、国際会議への参加が容易になったことも事実である。そこで、情報収集の間口を広げるために、(ii)で述べたように多くの国際会議への参加を計画している。
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