2021 Fiscal Year Research-status Report
加算無限個のシェアを生成可能な秘密分散法の効率化と秘匿計算への応用に関する研究
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20K11819
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
澁谷 智治 上智大学, 理工学部, 教授 (20262280)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 秘密分散法 / 発展型k-しきい値秘密分散法 / ラグランジュ補間 / 符号化計算 / 秘匿計算 / 非対話型マルチパーティ計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
[I]COVID-19の感染拡大の影響を受け、当初予定していた2020年度の研究計画に関しては十分な成果を得ることができなかった。そこで、2020年度に予定していた「可算無限個のシェアの生成に有限体の拡大体を利用した際のセキュリティ上のリスクに関する検討」について改めて取り組んだ結果、以下の成果を得た。 (1)シェアを生成する体を、参加者の増加に合わせて位数のより大きなものに変更する手法では、異なる体の元を結び付ける単射が必要となる。秘密情報を守るためにはこの単射を秘匿する必要があるが、本来秘密が復元できないはずのシェアの組み合わせから単射が再構成できることを明らかにした。(2)(1)の検討に基づき、異なる体の元を結び付けるための単射に要請されるセキュリティ上の要件を明らかにした。 [II]2021年度以降に予定していた「秘匿計算法の開発」について新たに取り組み、参加者数が可算無限となる場合にも対応できるような非対話型のマルチパーティ計算(NIMPC)を実現するための基礎理論について検討した。その結果以下の成果を得た。 (1)BeimelらによるNIMPC(Proc. of CRYPTO 2014)において「指示関数の計算」を実現するアルゴリズムを拡張し、参加者数が可算無限となった場合でもNIMPCによって指示関数の計算が実現できるシェアを生成することができる基礎的なアルゴリズムを構築した。(2)(1)で構築したアルゴリズムを参加者数が有限であるときに適用すると、Beimelらの手法よりもシェアサイズを小さくできることを明らかにした。 [III]Yuらによる「ラグランジュ符号化計算法」(arXiv:1806.00939v4, 2019)と呼ばれる秘匿依頼計算アルゴリズムの改良について検討し、データの追加に対して効率的に再符号化が行えるアルゴリズムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の感染拡大の影響を受け、当初予定していた2020年度の研究計画に関しては、十分な達成度を得ることができなかった。しかしながら、ワクチンの普及やウィルスの弱毒化などにより研究環境の改善が進み、2021年度に関しては以下のように大幅な進展が見られた。 まず、2020年度に予定していた3つの研究計画のうち、(1)シェアの生成に有限体の拡大体を利用した際のセキュリティ上のリスクに関する検討については、上述の[I]のように一定の成果が得られており、このことによって、残りの、(2)シェアサイズに関する限界式の定式化、(3)シェアサイズの削減の実現、の進展に対しても目途が立っている。 また、2021年度以降に予定していた2つの研究計画のうち、(4)秘匿計算法の開発については、上述の[II]、[III]のように、その基礎理論の整備が大幅に進展した。特に[III]については当初予定していた計画にはなかった成果であり、最終年度に向けて新たな発展が期待される。 以上を総合的に評価して、(2)おおむね順調に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に予定していた3つの計画のうち、(2)シェアサイズに関する限界式の定式化、(3)シェアサイズの削減の実現、については、[I]に述べた成果に基づいて精密な定式化と評価を行う段階であり、2022年度はこれらを実施する。 また、2021年度以降に予定していた2つの計画のうち、(4)秘匿計算法の開発、については、2021年度の基礎的な検討をさらに発展させる。具体的には、[II]で述べた基礎的な検討を拡張してより一般的な論理関数に対するNIMPCの開発を行うこと、また[III]で述べた成果に対してアルゴリズムのさらなる一般化を行うこと、の2点を予定している。 最後に、2021年度以降に予定していたもう一つの計画である、(5)機密データが復元できる条件の拡張とそれに対する発展型秘密分散法の開発については、[I]において得られた知見が有効であるとの感触を得ている。そこで、本計画に対する検討も2022年度に行う予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大から、参加を予定していた国際会議・国内会議の多くがオンラインでの実施となった。このため、旅費の支出が大幅減となった。 2022年度については国内会議の対面での開催が増えることが見込まれるため、旅費の減少幅が多少抑えられる見込みである。また、研究の進展によりシミュレーションによる評価などを行うための計算機が新たに必要となる見込みである。これらのことから、2021年度に生じた次年度使用額を適切に支出できる予定である。
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