2021 Fiscal Year Research-status Report
The influence of additional novelty by the stimulus change on mere exposure effect
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20K12030
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
松田 憲 北九州市立大学, 大学院マネジメント研究科, 教授 (10422916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70195444)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 単純接触効果 / 倦怠効果 / 親近性 / 新奇性 |
Outline of Annual Research Achievements |
単純接触効果とは,特定の対象に反復接触することで当該対象への好意度が上昇するという効果を指す(Zajonc,1968)。単純接触効果は再現性と頑健性の高さが知られている一方で,過度な反復呈示などによる刺激への心的飽和によって,効果が減衰ないし消失することも報告されている。 我々の先行研究(松田他, 2014)は,反復呈示時に刺激に新奇要素を付加することでの倦怠効果の低減を目指した。自動車画像の反復呈示時に,背景の自然風景が毎回変化する条件と変化しない条件に分けて操作し,背景変化条件のほうが刺激の反復呈示によって好意度評定値が高くなることを示した。 続いて,呈示刺激自体の一部分を変化させることでの新奇性付加によっても反復接触による心的飽和の発生を抑制し得るかを検討した。松田他(2019)では女性アバターの化粧を変化させることで,松田他(2022)は男女アバターの髪型変化によって,新奇性を付加した。化粧変化による結果は,女性参加者で好意度評定値が上昇したものの,男性参加者にはそのような効果は見られなかった。その理由として,新奇性要素である化粧が男性参加者には身近でなかったことや,変化の検出の閾値に性差がある可能性が考えられた。そこで男性にとっても身近であり,変化量の大きい髪型変化を新奇性要素として用いたところ,化粧変化と同様に女性参加者のみに髪型を変化させたアバターへの好意度評定値の上昇が見られた。男性の髪型は女性に比べ短髪であったために,髪型を変化させる際のその変化量が少なかった可能性も考えられた。 そこで本年度に行った実験では,服装の明度を操作した。アバターの性別間で新奇性要素の変化量が一定であることと,自己関与度に性差のないことが,その理由として挙げられる。 本研究の意義は,従来の単純接触効果研究の中で検討されてこなかった反復接触時の新奇性要素について検討している点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に行った実験では,新奇性要素として服装の色に着目した。呈示刺激は男女のアバター画像で,事前に行われた予備調査に基づいてアバターの反復呈示前の事前好意度を高低で操作し,服の色はグレースケールより明度50%(0%:黒,100%:白)を基準として11,24,37,50,63,76,89%の7段階で操作した。実験は全部で9つのセッションからなり,評定フェーズであるセッション1,5,9(呈示回数1回,5回,9回に相当)では,参加者は呈示されたアバターに対する事後好意度(反復呈示後の好意度)と親近性,新奇性を9段階で評価した。接触フェーズであるセッション2,3,4,およびセッション6,7,8では,アバターが連続呈示され,半数のアバターは接触ごとに服装の色が明度11,24,37,63,76,89%のグレースケールでランダムに変化し,もう半数のアバターの服装の色は明度50%で固定された。本実験は,当初は対面による個別実験として行う予定であったが,コロナ禍によって対面での実施が不可能となったために,刺激の呈示及び回答は,すべてGoogleフォーム上で行われた。 実験の結果,女性参加者は,特に事前好意度が高いアバターに対して,反復呈示による事後好意度の上昇や,服装色の明度変化による事後好意度上昇の促進効果を得ることができた。服装色明度変化を伴わない事前好意度の高いアバターに対して,呈示回数に応じて親近性の評定値は上昇していたにもかかわらず,9回呈示条件の事後好意度の上昇が見られなかったことから,反復接触による親近性の上昇に服装色の明度変化という新奇性要素が伴うことによって,過度な接触による心的飽和の抑制と好意度の上昇に繋がることが分かった。一方で,男性参加者は服装色の明度変化による事後好意度の上昇効果は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験では,アバターの服装色の明度変化による新奇性の付加による単純接触効果への影響について検討を行った。その結果,これまでに行ってきた実験(松田ほか,2019;松田ほか,2022)と同様に,刺激反復呈示時の新奇性付加による好意度の上昇効果は女性参加者のみで見られたものの,新奇性の付与による男性参加者の好意度への影響が見られなかった。 今年度の実験では服装の色変化をグレースケールで操作したが,今後は有彩色を用いることで今年度の実験とは異なる結果を得られる可能性がある。また,服装についても,今回の実験では半そでのTシャツに統一したが,今後はその他の服を使用することや,アクセサリーなどの他の刺激を操作することで,新奇性付加による単純接触効果の促進効果が得られると考えられる。 使用したアバターについても,本実験に使用したアバターは日本人離れしたデザインであったため,参加者によってはやや親しみを感じにくかった可能性も否定できない。今後はより身近に感じるアバターや,実際に存在している有名人の写真などを利用することも考えている。 さらに,今年度の実験では新奇性要素への関与度と変化量を男性と女性で揃えたにもかかわらず男性参加者に単純接触効果が得られなかったことについて,変化に対する選択的注意の向けられ方にそもそも性差が存在している可能性が考えられる。今後の研究ではアイ・トラッカーを用いて,刺激呈示時に参加者が刺激のどこを見ているのかを検出していくことを考えている。
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Causes of Carryover |
当初行う予定であった対面によるIAT実験が,本年度はコロナ禍の影響で次年度以降に持ち越しとなったため,予定していたIAT用ソフトウェアとノートPCの購入を見送ったこと,また参加予定であった学会が遠隔開催となったことで旅費の支出が不要になったことがその理由である。 使用計画としては,対面実験用のノートPCとIAT用のソフトの購入費としての使用,そして対面実施される学会参加のための旅費として使用していく予定である。
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