2020 Fiscal Year Research-status Report
Creation of new knowledge on global warming countermeasures using domestic edible fuel biomass
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20K12247
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
鈴木 高広 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (60281747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成効率 / 多層栽培 / 甘藷 / ポリフェノール / 採光率 / 下水汚泥 / メタン / 根圏灌水栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
甘藷の生産性を高めるために太陽光の採光率と光合成効率について解析した。また、下水処理場において根圏灌水栽培法を用いて下水および処理水に含まれるミネラル等の施肥効果を根圏灌水三層栽培システムを用いて解析したところ、通常農法の8倍量に相当する20kg/㎡の芋の生産に成功した。 多連三層栽培システムを用いて上層、中層、下層の採光率を測定したところ、上層に比べ中層では採光量が7割、下層は5割にとどまっており、芋と茎葉の全バイオマスの生産量は採光率に依存し上層の方が高い結果となった。ところが、採光量に対する光合成効率は、下層の方が上層よりも高いことが明らかとなった。そこで、葉のサイズと生成量、ポリフェノール含量、色素量、明度と光合成活性を解析したところ、採光量が多い上層の葉は下層よりもサイズが小さく、明度とポリフェノール含量が高く、光合成活性が下層の葉よりも低いことが判明した。また、葉の量は上層よりも下層の方が多いため、茎葉量に対する芋の重量比は下層が低いことが明らかとなった。これらの結果は、上層は紫外線を含む太陽光による光酸化作用を低減するためにポリフェノール含量を高めると共に葉の光反射率を高めることで光の吸収率を低下していることを示し、下層は少ない光を効率的に利用するために、葉量と光吸収率を高めていることを示唆する。 以上の結果から、上層の光の一部を下層に転送するシステムを開発すればさらに生産量を高められる可能性が高いことが明らかとなった。また、紫外線を遮蔽すれば上層の生産量が高まる可能性も示唆された。 さらに、生産した芋と茎葉を用いて下水汚泥のメタン消化効率の向上効果を調べたところ、芋単独添加の場合はpHが著しく酸性化しメタン収率が低下したが、芋と茎葉を添加することでメタン生成速度と収率が高まることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1の光転送システムに関し、上段に反射シートを設置し下段へ光を分散照射する方法を検討したが、シートの影により逆に下段の採光率が低下し甘藷の生育が抑制されることが分かった。さらに、葉の色調、色素、光合成活性、ポリフェノール量を調べた結果、最上段の葉は過剰な光を散乱反射することで光毒性を低下するため、光合成効率も低下させているという重要な知見が得られた。この結果から、採光率が甘藷の生産性に大きく影響することが明らかとなり、最上段の光の一部を屈折することで最上段の採光率を低下し、最下段の採光率を高める効率的な仕組みを設計するために重要な知見となった。 課題2の熱分布、CO2濃度分布の測定用設備を初年度に準備できたため、2年目に観測と調査を実施する計画である。 課題3の越冬熱源に関しては、下水処理水の潜熱を利用することで越冬栽培に成功した。下水道事業団と共同で効率的な流量や水温の変化を解析することで、潜熱利用効率の改良方法を検討している。 課題4のメタン発酵条件に関しては、芋と茎葉を添加することで汚泥の分解率が高まる効果が得られた。従来は消化汚泥残渣の処理に高コストを要していたが、メタン収率が高まることで発電や熱源供給量が増えると共に、消化汚泥残渣を甘藷栽培の肥料として利用できることも実証した。 以上のように、多層栽培における太陽光の変換率、下水の施肥効果、冬季の暖房効果、甘藷添加による汚泥消化率の改良方法に関する重要な成果と知見が得られた。また、甘藷の光合成能力が予想以上に高いことが分かり、光合成能力を最大限利用するために紫外線の作用を抑える方法を課題1で検討することとなった。これらの試みにより、甘藷の大量生産により温室効果ガス排出量を大幅に削減することが実現可能であることを実証できると見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1: 採光率と光合成効率の関係を解析したところ、紫外線の影響を防ぐために葉の表面の光反射率を高めたり、紫外線を吸収・反射するポリフェノールや色素量が増加していることが明らかとなった。そこで、紫外線の遮蔽フィルムを設置することで、多層栽培における採光率と光合成効率に与える影響を詳しく解析し、甘藷の生産量をさらに増大させる採光条件を検討する。また、可動式反射シートを用いた光分散効果を調査することで、上段の過剰光を下段に転送する低コスト設備の設計に取り組む。 課題2: 多連多層栽培において熱分布やCO2濃度分布を調べ、採光率との関係を解析することで、換気設備の設置条件を検討する。 課題3: 越冬栽培期間を含めた周年栽培方法の最適操作条件を解析する。 課題4: 芋と茎葉の添加により汚泥の分解率を一段と高める方法を検討する。また、メタン発酵残渣の施肥効果を調べることで、ゼロエミッション化の方法を検討する。
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Causes of Carryover |
初年度に旅費を250,000円計画していたが、新型コロナの感染拡大により関連学会や会議が中止になり、リモート会議に変更するなどにより78,000円の使用額にとどまった。また、出版経費等、雑費の予算50,000円が未使用となった。 新型コロナの状況に応じて引き続き出張が制限される場合は、物品費等へ用途を変更する。 また、投稿論文の出版経費等として初年度分も2年目以降に使用する予定。
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Research Products
(3 results)