2021 Fiscal Year Research-status Report
環境リスク問題に関する報道が個人のリスク認知およびリスク回避行動に与える影響
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20K12310
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
岸川 洋紀 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (70469071)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リスクコミュニケーション / 安全・安心 / メディア報道 / COVID-19 / ワクチン接種 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,環境問題や健康影響に対する認知や行動にメディア報道がどのように影響を与えているかを検証することを目的として調査分析を行った。 2021年7月から8月にかけて,大規模調査を行う前の予備調査として,大学生268名を対象としたweb質問紙調査を行った。質問紙調査では,メディアの利用状況,新型コロナウイルスに対する危険性の認識,ワクチンの効果や安全性に対する認識を尋ねる他,匿名性を担保するなどの倫理的配慮を行った上でワクチン接種状況についても調査を行った。 回答を得た191名に対する分析の結果,以下の結論を得た。1)新型コロナウイルスやワクチンに対する情報源としての利用は,テレビ,SNS,ネットニュース,家族知人の順に多くなっていた。これらの利用は概ね70~90%であったのに対し,ネットでの検索,国や自治体,新聞などの情報源の利用は低くなっていた。2)各メディアの利用と新型コロナ感染症の危険性の認知との関連を調べたところ,テレビ利用者は新型コロナ感染症の自身および身近な人への危険性を高く感じ,SNS利用者は身近な人への危険性を低く感じ,ネットニュースの利用者は感染する確率を高く感じている傾向がみられた。3)ワクチンの効果および危険性の認識に対しては,テレビ利用者が集団免疫の形成効果を強く評価し,短期的な副反応への懸念が強く,SNSの利用は関連性が認められず,ネットニュースの利用者は感染リスクの低減効果および集団免疫の形成効果を強く評価し,短期的な副反応への懸念が強い傾向がみられた。4)ワクチンの接種行動とメディアの利用との間には関連は認められなかった。新型コロナ感染症への認知と接種行動との間にも関連は認められず,ワクチンの効果や副反応についての懸念が接種行動と強く関連していることや自粛ストレスからの解放願望が関連してる可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年秋頃には,予備調査結果の分析をある程度完了し,国内の感染状況も少し落ち着いており,ワクチン接種についても2回目接種が概ね完了した段階であったため,当初は2021年度内にweb調査を行う計画であった。しかしながら,2021年11月末頃からオミクロン株の流行が懸念され,年始からは感染者数の増加が始まり状況が読めない中,調査の実施時期について見直しが必要であった。また,ワクチン接種についても2021年末時点では,3回目接種の時期や対象者などについて情報が錯綜しており,そのような状況の中では接種意思や行動などについての質問は行えないため,2021年度内の調査実施は見送り,2022年度に実施するよう研究計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年に行った予備調査から,メディアの利用と新型コロナ感染症やワクチンへの認知との関連,ワクチン接種行動に影響を与える要因などについて一定の知見が得られている。2022年度はこれらの関連性が大学生以外の集団においても認められるのかweb調査により検討を行う。特に,予備調査では対象が大学生であり,SNSやネットニュースの利用者が多い一方で,新聞などの利用者が少なく,メディアの利用状況による比較に不十分な点があったため,調査対象の年齢層を拡大し検証を行う。また,予備調査では各種メディアの利用状況のみを尋ねたが,入手している情報の性質や種類などについても情報を得た上で分析を行う計画である。 新型コロナウイルス感染症については,2022年5月時点で発生から2年以上の歳月が経過している。当初は危険性を不安視する論調ばかりであったが,最近ではコロナウイルスの健康影響について当初よりは低く評価し,経済的な影響への懸念やテレビ報道への不満を述べる声も生じている。そのため,web調査においては,テレビや新聞などのマスメディアの報道姿勢への評価,感染症報道へ求める要素などについても尋ねる予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度内に実施予定であったweb調査については,オミクロン株の流行やワクチン3回目接種の実施など状況が落ち着かず,2021年度中に調査を実施することは困難であると判断し,2022年度に調査実施を遅らせることとした。そのため,調査の実施費用や調査データの保存・分析に関連する機器費用などは発生せず,2022年度に繰り越す計画とした。また,学会参加などで計上していた旅費については,オンライン開催となったため費用が発生しなかった。2021年時点での研究成果については論文投稿中であり,採録が決定すれば諸費用が発生するが,現在査読中であるため,この費用も2022年度に繰り越すこととなった。
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Research Products
(1 results)