2021 Fiscal Year Research-status Report
ものづくり立国・日本の新成長に資する日本美「琳派」を表現する工業デザイン造形研究
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20K12532
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉本 美貴 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (00635047)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 琳派 / 造形手法 / プロダクトデザイン / 工芸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究期間内では、日本の代表的な美意識の一つであり海外でも認知度が高い「琳派」の美意識を対象に、ユーザと製品の直接の接点である工業製品の外観デザインで「琳派」の美意識を表現するための造形手法を明らかにすることを目的とし、2021年度までに、(1) 既往研究から表現意図と特徴を抽出、類似する表現意図別に表現特徴を再定義、(2) 再定義した特徴の具体的手法の抽出、(3)工業製品への応用案の考案、(4)応用案について有識者とディスカッションを行うこととしていた。しかしながら、2020、2021年度は新型コロナウィルス感染症対策の影響により、事例調査や有識者とのディスカッションが十分に実施できていない。そうした中で、限られたリサーチではあったが、琳派の造形手法が工芸をベースにしている点に着目した。たとえば、琳派の図案は単純化、省略化、デフォルメがされていることが指摘されているが、それは、花瓶などの陶器や、漆の硯箱に施された図案が工芸の手法で製作されているため、ものづくりがしやすいことが前提となっているためだと考えられる。このことについて、有識者とディスカッションを進めているところだが、上記の仮説に概ね賛同をいただいており、これまでにない琳派の造形手法が導出される可能性が大きい。 そこで現在は、琳派が対象としている主な工芸の造形手法の抽出と、実際の琳派の作品との比較検討により、仮説の検証と具体的な造形手法の導出を行なっている。その後、導出した造形手法を基に事例となる工業製品のデザイン案を考案し、有識者やユーザーへの検証を行う。本仮説が検証されれば、琳派の造形手法を工業製品に応用することが可能になると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020、2021年度は新型コロナウィルス感染症対策の影響により、在宅勤務や出張の自粛によって事例調査や有識者とのディスカッションが十分に実施できていない。また、工業デザインを学ぶ学生(計15名)の協力を得て、(a)全体造形(b)細部処理(c)付属品等ごとに、工業製品への応用案をスケッチや簡易モデルによって各10案以上考案する計画も立てていたが、同様の理由により活動ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は新型コロナウィルス感染症対策が緩和されてきていることから、当初計画では順番に行うことにしていた調査とディスカッション、アイデア検討を同時並行で行う。はじめに琳派の作品調査と工芸の造形手法についての不足分について調査行う。それと同時に、現段階の仮説についてそれと有識者とのディスカッション、学生とのアイデア検討を実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大防止策の影響により、美術館での現物調査や有識者とのディスカッションのための出張などが十分に実施できなかったことが大きい。2022年度は調査および検証のための旅費、事例となる工業製品のデザイン案製作費等に使用する。
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