2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on Extension of Qualitative Research Method by Using Interactive CG Technology
Project/Area Number |
20K12554
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
斎藤 進也 立命館大学, 映像学部, 准教授 (70516830)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | インフォグラフィックス / 可視化 / 情報デザイン / ゲームエンジン / 質的調査 / デジタルヒューマニティーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、2020年度に実施した文献レビューやプレ調査で得られた知見を踏まえつつ、質的調査における研究のアウトプットの支援にフォーカスを当てたユーザーインターフェースの設計を行なった。具体的には、次のふたつの取り組みを実施した。一点目は、質的調査法における研究成果のプレゼンテーション支援としての3Dインフォグラフィックの活用法の検討である。複線径路・等至性アプローチ(TEA)等の分析手法においては、調査結果を提示する際に、概念図が用いられるが、これをゲームエンジンであるUnrealEngine4による3Dグラフィックスで表現する方法を模索し、プロトタイプの作成を行なった。二点目は、人文社会科学領域における成果を公表する上で、汎用的に用いられる表現(年表等)をベースにしつつ、バーチャルミュージアムでみられるような展示的な閲覧表現の要素も加味したインタラクティブな3Dインフォグラフィックスの設計を行なった。とりわけ、人文科学領域においては、図版などのイメージデータの提示が研究成果のアウトプットにおいて使用されることが多く、そうしたものを効果的にオーサリングしつつ、一種の「仮想展示」として研究成果を発信するというスキームを構築したものといえる。 UnrealEngineという強力な表現力をもつゲームエンジンを人文社会科学領域の成果発信に活用する上での具体的な方法論的整備が前進したことは、2021年度における着実な成果であるといえるが、昨年度に引き続き、コロナ禍ということで、対面での実施を予定していた取材や資料収集において若干の進行プロセスの変更が余儀なくされる面もあった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度においては、上記の通り、過年度に得られた知見をベースに具体的な方向性を見出し、プロトタイプの実装に着手できたという点において、着実に進捗を積み重ねることができているが、コロナ禍に起因するプロセスの遅れも一部に生じている。 今年度は、人文社会科学領域の研究成果の発信段階にフォーカスを当てつつ、これまで文章と平面の図で表現されていたところを、インタラクティブな3次元グラフィックスで表現するための試論として位置づけられるが、この効能は、単純に情報が把握しやすくなるだけではなく、適用分野によっては研究のあり方そのものを抜本的に更新する可能性が今年度の取り組みから示唆された面があり、確実に今後の展開の足掛かりとなった。豊かな表現力をもつゲームエンジンは、建築や医療など多くの領域で社会的な活用が進んでいるが、学術領域による新たな活用モデルの提示は、理論と実践の双方において有意義な含意をもつものになると考えられる。 一方で、2021年度もコロナ禍ということで、対面での調査や資料収集に関わる研究プロセスにおいて、進捗に影響が生じた面もあった。本研究におけるシステム面あるいはデザイン面の開発はプロトタイピングというかたちで着実な進捗があるが、システムに導入するコンテンツの収集や選定も同時に行うことが、実践研究として成果を検証する上で重要になるが、この点については、当初の予定よりは遅れが生じている。この状況を踏まえ、次年度以降の研究の進め方を再検討し、しっかりと成果が上げられるように調整することとする。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、過年度の取り組みを踏まえつつ、システムの実装とそこに導入するコンテンツの拡充を研究の両輪として進め、実践研究として着実に成果を上げることを目標とする。 上記の通り、システム面、デザイン面については、プロトタイピングによって目処が立っているが、課題となる導入コンテンツの収集・選定については、より具体的なプランニングを行なった上で実施する。これまでも、立命館大学におけるアート・リサーチセンターにおける研究プロジェクトとの連携は行なってきたが、次年度は、この点をさらに強化し、同センターが保有している映画関連資料や写真関連資料のコレクションのアーカイブ化や分析といった具体的な研究プロセスとの連動という観点で、取り組みの方向性を練り直す。複線径路・等至性アプローチ(TEA)をはじめとする質的調査を対象とする取り組みについても、同様のスタンスで既存プロジェクトとの連動性を強化することで、着実な成果をあげたい。こちらについては、立命館大学ものづくり質的研究センターに所属する研究者との共同も視野に、実際の研究調査を題材としたインフォグラフィックスの開発を進めていく予定である。 そして、Replaying Japan 2022等の国際会議や情報処理学会等の国内の関連学会にて研究成果を発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
2021年度も、新型コロナウイルス蔓延防止措置のため、発表・調査・打ち合わせに関する出張をオンラインに切り替えることによる、次年度使用額が生じた。また、予定していた学生アルバイトの雇用を見直すこととなった。 2022年度においては、新型コロナウイルス蔓延防止措置を行いつつも、必要な出張は実施することとする。また、状況を踏まえた研究計画の若干の変更にともない、国内研究機関(アート・リサーチセンター、ものづくり質的研究センターなど)との連携強化のための予算として、機材やコンテンツの購入、学生アルバイトの雇用にかかる費用を補強する必要性が生じているため、充当を行う。
|
Research Products
(2 results)