2020 Fiscal Year Research-status Report
An empirical research on strategies for supporting students with disabilities in university libraries
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20K12566
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
松戸 宏予 佛教大学, 教育学部, 教授 (80584482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 久美子 八洲学園大学, 生涯学習学部, 教授 (70781441)
野口 武悟 専修大学, 文学部, 教授 (80439520)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大学図書館 / 障害学生支援 / 持続可能な支援 / 現状 / 課題 / 人的支援 / 間接支援 / 学習環境整備 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本の大学の通学課程・通信教育課程に携わる図書館の障害学生支援の取組みの現状を明らかにする。そして,図書館の障害学生支援が持続可能な業務として展開するための示唆を得ることを目的とする。この目的を遂行するため, 2020年度は①支援業務の状況に差がみられる取組み,②各支援の取組み状況の程度と大学図書館の属性との間の関連,③取組の背景について質問紙調査(オンライン調査併用)を通して明らかにした(対象460館,回収率285館62%)。 成果の1部は2020年10月に大学図書館問題研究会主催の研究大会でオンラインで発表した。題目は「日本の大学図書館における障害学生支援の現状:全国質問紙調査を通して」である。また,上記の発表をもとに『大学図書館問題研究会誌』(査読付)に2021年2月末に投稿,査読中である。 支援の現状では,学習環境整備,人的支援,間接支援の観点で状況を探った。また,3つの属性(①国公立・私立大学,②教育学部・社会福祉学部の有無,③宗教系大学・非宗教系大学)で支援の差を明らかにした。 支援の状況において学習環境整備と間接支援では,「エレベーターやスロープなど」の整備は8割,他は2割以下の整備状況だった。人的支援では,個別のニーズに応じた支援など4割だった。この背景には,障害学生が主体的に学校に支援の申し出をしなければ,「支援障害学生」として合理的配慮が受けられない状況にある。本研究でも「存在が見えにくい障害学生」のため障害学生支援は喫緊の事案とされにくいことが挙げられていた。 属性による支援の実施の差では,学習環境整備では教育学部や社会福祉学部が設置の有無により,6項目中5項目でより支援が大学図書館で実施されていた。人的支援では,宗教系大学図書館が非宗教系大学図書館と比べると15項目中11項目でより支援が実施されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の計画に沿って本研究を遂行できた。2020年度の当初の計画では大学図書館対象数は724館とみなしていた。しかし,1大学の本館を対象としたこと,複数の大学による統合を見直した結果,対象校数は460館となった。また,質問紙調査の実施を6月初旬から7月初旬と当初は設定していたが,コロナ禍の状況により実施が7月中旬から8月下旬となった。 しかし,9月の1ヶ月間に集中して分析し,得られた成果の一部を大学図書館問題研究会の研究大会にて発表を行った。その後,分析の補足を行い,2021年2月末に論文を『大学図書館問題研究会誌』に投稿した(2021年5月10日現在,査読審査中)。また,2021年度の聞き取り調査も計画通りに進めているため。 なお,放送大学にて『読みたいに応える図書館』「第2回 公共・学校・大学図書館の視覚障害者等へのサービス」(2021年4月11日)の大学図書館部門で成果の一部を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,大学図書館における障害学生支援を持続可能な支援として定着を図るためどのような方略が必要かを明らかにすることである。このため,2020年度は現状調査を行った。質問紙調査では方略面に関した「相談・連携」面で支援に特化した委員会の参加,相談・情報交換・打ち合わせの頻度, 「相談・連携」の利点について概要を得た。 2021年度は,聞き取り調査を通して次の6観点でさらに詳細を得る。観点は①基本データ,②現状の支援体制,③支援の背景・コンセプト,④障害学生支援の定着化,⑤支援の強化に関する方略,⑥取組みに対してである。また,コロナ禍の状況を鑑みてオンラインを通した聞き取り調査を行う。 計画の推進に当たっては,研究分担者2名と打ち合わせを重ねながら,次のような段階を経ている。1.聞き取り調査調査方針の確認(2021.1月),2.対象校の抽出条件の設定と抽出(2021.2月),3.対象校へ依頼交渉(2021.3月~4月),4.インタビューガイドの確認と倫理審査申請(2021.4月),5.聞き取り調査(2021.5月~7月),6.分析(2021.8月~10月),7.総合考察:量的調査と質的調査で得られた結果を踏まえて(2021.11月~12月)8.成果発表(2022予定)である。 なお,対象図書館については,当初の計画では通信,国立,私立を各10館(計30館)と設定していた。ただし,支援の強化に関する方略では,研修や図書館内外の部署と連携を行っている図書館を対象とした方が詳細な情報が得られるため,通信,国立,私立の区分をせずに抽出条件に該当した大学図書館31館(内,5大学は2019年に個人で聞き取り調査済のため26館)を対象とした。うち, 内諾が得られたのは17大学図書館であった(国公立6,私立11大学)。聞き取り調査済の5大学は,補足的に焦点を当てて尋ねる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由: 2020年度に前倒し請求(20万円)を行った。その内訳は,①質問紙調査回答協力にかかる20年度経費の不足額(54,833円),②茗溪図書館情報研究会参加にかかる交通費130,700円(京都⇔東京(@片道13070円*2*5回分),③オンライン参加費(2000円)であった。このうち,研究会参加がコロナ禍のため対面からオンラインに切り替わったため,主に交通費が残っている状況である。また, 研究分担者との打ち合わせのための交通費(48,000円)も同じ理由で残っている。なお, 茗溪図書館情報研究会では,今後の動向をみて対面参加に戻す方針である。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画: 主に①研究会参加の交通費(130,070円), ②文字起こし22大学分(17大学プラス補足として5大学)1回のインタビューで1時間を想定(@32780*22=721,160円)を予定している。
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Remarks |
放送大学『読みたいに応える図書館』「第2回 公共・学校・大学図書館の視覚障害者等へのサービス」(2021年4月11日)大学図書館部門で成果の一部を発表。
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Research Products
(1 results)