2021 Fiscal Year Research-status Report
An empirical research on strategies for supporting students with disabilities in university libraries
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20K12566
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
松戸 宏予 佛教大学, 教育学部, 教授 (80584482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 久美子 八洲学園大学, 生涯学習学部, 教授 (70781441)
野口 武悟 専修大学, 文学部, 教授 (80439520)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大学図書館 / 障害学生 / 自立 / 連携 / 研修 / 人的支援 / 間接支援 / 学習環境整備 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本の大学の通学課程・通信教育課程に携わる図書館の障害学生支援の取組みの現状を明らかにする。そして,図書館の障害学生支援が持続可能な業務として展開するための示唆を得ることを目的とする。この目的を遂行するため,2021年度は①支援状況で差がみられる取組みの背景と支援形態の特徴について,16大学図書館員を対象に聞き取り調査を通して明らかにした。 成果の一部は2022年7月にIFLA(国際図書館連盟)主催の国際図書館連盟ダブリン年次大会で発表予定(審査制),題目は「The characteristics of support for students with SEN in Japanese 16 university libraries」である。 支援形態の特徴は,①学習支援,②学生からの依頼に対する個別対応,③依頼のない学生に向けた間接支援が明らかになった。 学習支援は,検索方法,レポートのまとめ方など,学生の自立を見据えた支援が主であった。個別対応ではテキストデータ化や電子書籍の購入で対応していた。依頼のない学生に向けた間接支援では,図書館員からの声かけ,傾聴,居場所としての提供,館内サイン,ウェブサイトのわかりやすさなど環境整備の工夫を行っていた。 これら3つの支援形態は支援関係者の支援コンセプトと情報共有で成り立っていた。支援コンセプトは,「学生を主体者として尊重する」「職員がチームとして動く」であった。情報共有はミーティング,メーリングリスト,館内ノートによる引継ぎ,マニュアルを心がけていた。情報共有を積極的におこなっている大学図書館担当者は,他部署からの移動で図書館に関わっており,他部署とのインフォーマルに相談できるネットワークをもっていた。図書館職員という視点ではなく,大学職員という視点で支援を捉えていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3名での共同研究のため,オンラインを通して月に1度の打合せを継続的に行っている。 打合せでは,2021年度は1)聞き取調査の対象校の選定と実施,2)分析,3)成果発表の準備を中心に行った。 1) 聞き取り調査の対象校の選定と実施:2020年に行った質問紙調査の結果で得られた課題の1つに「障害学生からの依頼がないため、障害学生支援は喫緊の課題とならない」が挙げられた。このため,支援の強化に関する方略では,研修や図書館内外の部署と連携を行っている図書館を対象とした方が詳細な情報が得られると修正した。その際,通信,国立,私立の区分をせずに支援の取り組みに一定の基準を設け,抽出条件に該当した大学図書館31館(内,5大学は2019年に個人で聞き取り調査済のため26館)を対象とした。そして,2021年4月から5月にかけて26館を対象に依頼した。そのうち,承諾を得られた16館に聞き取り調査を5月から7月にかけて担当の2名から3名で行った。 2)分析:「配慮が必要と思われる学生(あるいは,潜在的な利用者)に何かしらの工夫や準備を行っている」16の大学図書館で得られたデータをもとに,支援形態の特徴を明らかにするため,2つの手法を用いて分析を行っている(2022年5月),①障害学生に対して支援を行ううえで,担当者はどのような心がけで手立てを行っているのかを軸に,支援形態はどのようなものか,支援と連携など全体的な関係について理論生成を行う(M-GTA 松戸宏予),②利用者視点と運営視点での支援形態の比較を行う(KJ法 野口久美子) 3) 成果発表の準備:前述の①については、IFLA(国際図書館連盟)主催の年次大会のポスター発表に応募し2022年4月1日に採択された。発表予定は7月である。②については11月の情報メディア学会で発表の予定である。このような状況から「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今後の推進方策:2022年度が最終年にあたるため, 成果発表にむけて次の計画を立てている。(1)7月IFLA(ポスター発表),(2)11月 情報メディア学会(口頭発表),(3)2023年2月末か3月初旬 シンポジウム 2.対象選定と分析手法の変更:本研究の目的は,大学図書館における障害学生支援を持続可能な支援として定着を図るためどのような方略が必要かを明らかにすることである。この目的を遂行するため,当初の計画では通信,国立,私立の各10館(計30館)を対象に「①. 差がみられた取組みの背景:意識,体制,連携,研修の観点で,詳細をつかむ。②. 支援形態の特徴:図書館の属性でグループ化したデータから共通点を抽出する。③. ①と②の結果から,図書館員が状況に応じた支援を行うための方略を総合考察する」ことを挙げていた。しかし、「現在までの進捗状況」でも述べたが, 2020年に行った質問紙調査の結果で得られた課題の1つに「障害学生からの依頼がないため、障害学生支援は喫緊の課題とならない」が挙げられた。調査回答で支援を肯定的に取り組んでいたのは約2割だった。 このため,通信,国立,私立の区分なく支援の取り組みに一定の基準を設け,抽出条件に該当した大学図書館31館(内,5大学は2019年に個人で聞き取り調査済のため26館)を対象とした。また,分析についても「配慮が必要と思われる学生(あるいは,潜在的な利用者)に何かしらの工夫や準備を行っている」16の大学図書館で得られたデータをもとに,支援形態の特徴を明らかにするうえで,2つの手法を用いて分析を行っている(2022年5月現在),①障害学生に対して支援を行ううえで,担当者はどのような心がけで手立てを行っているのかを軸に,支援形態はどのようなものか,支援と連携など全体的な関係について理論生成と,②利用者視点と運営視点での支援形態の比較である。
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Causes of Carryover |
2021年用の訪問調査のための交通費や宿泊費が3名分で567,000円であった。また,共同研究者3名による毎月の打合せのための交通費や宿泊費が480,000円であった。2021年度もコロナ禍が続き,打合せ並びに聞き取り調査はすべてオンラインを通して行った。そのため,交通費や宿泊費が未消化となった。 しかし,2022年度にはIFLA(国際図書館連盟)主催の年次大会がアイルランド(ダブリン)において対面で予定されており,ポスター発表が採択されたため渡航する。航空運賃や宿泊費などに利用する予定である。
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