2020 Fiscal Year Research-status Report
思想史的位置づけと基本諸概念の解明をとおしたアンリ・マルディネの哲学の体系的研究
Project/Area Number |
20K12776
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小倉 拓也 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (00739401)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アンリ・マルディネ / エルヴィン・シュトラウス / 感覚 / リズム / ダンス / 空間 / 形象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アンリ・マルディネの哲学を、その思想史的位置づけの解明、そしてそれにもとづく基本諸概念の解明をとおして、体系的に研究することである。研究実施計画では、2020年度は、マルディネの「感覚」および「リズム」の概念を、エルヴィン・シュトラウスなど、その理論的源泉との関係から、思想史的に位置づけ、明らかにする予定であった。 2020年度は、この目的、計画に沿って、次の二つの研究を行った。第一に、マルディネのリズムの概念を、エルヴィン・シュトラウスのダンス論とジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリのリトルネロ論からなる、思想史的布置に位置づける研究である。これについては、その成果を学会で口頭発表し、その発表にもとづく論文が、2021年度刊行の機関誌に掲載されることが決まっている。第二に、マルディネの最大の理論的源泉であるシュトラウスの感覚論を、空間性の観点から明らかにする研究である。これについては、所属機関の紀要に論文として発表した。これらによって、今年度計画していた研究計画は、必要な程度達成されている。 また、それらに加えて、以下の成果も得られた。まず、ドゥルーズとガタリの芸術哲学を、シュトラウスとマルディネの感覚論との関係を精査しながら論じる、エリザベス・グロスの『カオス・領土・芸術』の翻訳を共訳で行い、法政大学出版局から刊行した。これについては、学会から依頼があり紹介文を寄稿した。また、マルディネが美術史家のアロイス・リーグルから着想を得て独自に練り上げている、エジプト芸術の形象性に関する理論が、ドゥルーズの絵画論に重大な影響を与えているということを論じる論文を執筆した。これについては、2021年に刊行予定の学術誌への掲載が決まっている。 以上のとおり、2020年度は、当初の目的、計画に沿って、それらを達成する研究を十分に行うことができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」で示しているように、当初の研究目的、研究計画に沿って、マルディネの哲学の主要概念を、その思想史的位置づけの観点から明らかにする研究を遂行し、二つの主要な成果を発表することができたから。また、それらに密接に関連する哲学書の翻訳を刊行することができ、さらに研究計画で2021年に実施する予定となっていた、美学・芸術学的観点からのマルディネの哲学の研究に、部分的に取り組むことができたから。これらの理由から、本研究の現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究計画に沿って、マルディネ自身のテクストと、思想史的に関連するテクストの読解を基本としながら、その思想史的位置づけと、基本諸概念を明らかにしていく。2021年度は、研究計画にあるとおり、マルディネの哲学を美学・芸術学の観点、とりわけ美術史の観点から明らかにする研究を行い、成果の発表を目指す。また、シュトラウスの感覚論を、空間性の観点から明らかにする研究についても、引き続き押し進め、成果の発表を目指す。
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Causes of Carryover |
予算計上時は、研究対象であるマルディネのテクストを本研究での使用の範囲内で検索可能なかたちでアーカイブ化するためのスキャナを購入する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定していた研究出張を行うことができず、その事態に対応するために、出張によって得られる成果をカバーすることができるだけの多量の文献を用いた研究を行う必要が生じ、文献の購入のために多くの費用がかかるようになった。そのため、予算の執行に慎重を期し、余裕を持った柔軟な対応をすることとした。研究遂行上の喫緊性が「文献の入手>スキャナの購入」だったことから、前者を優先し、後者を保留していたところ、後者に必要な金額を確保できる見込みとなったが、その大勢が判明したのが年度終盤だったことから、年度末の「駆け込み購入」はせず、次年度に購入することとした。以上が次年度使用額が生じた理由である。次年度にスキャナを購入することで、これを執行する計画である。
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Research Products
(8 results)