2020 Fiscal Year Research-status Report
ポップカルチャーを中心とした天皇・皇族・皇室表象の研究
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20K12824
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
茂木 謙之介 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00825549)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 天皇 / 皇族 / ポップカルチャー / 表象 / ナショナリズム / 幻想文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は以下の学術論文を得ることが出来た。 ①茂木謙之介「政治とアリスとユートピア――初期別役実テクストと〈幻想文学〉の共時性について」(『ユリイカ』52巻12号、pp.192-200、2020年9月)/②茂木謙之介「「「慰霊」する「弱い」天皇の誕生―1994年小笠原諸島行幸啓の検討から―」(『世界史研究論叢』10号、pp.56-68、2020年10月)/③茂木謙之介「〈正統〉と〈神聖〉の在りかー戦後天皇(制)をめぐる〈偽〉なるものの想像力ー」(『ユリイカ』52巻15号、pp.279-287、2020年11月) まず①では、1970年代以降のポップカルチャーの隆盛を支えた幻想文学ブームについて、劇作家の別役実と連関させて論じ、別役のテクストが同時代の政治と文学をめぐる問題系とどのように関わっていたのかを明らかにし、本研究課題の前提となる同時代状況の把握を行った。続けて②では1994年の明仁天皇及び美智子皇后の小笠原諸島訪問を題材として、「慰霊」というキーワードを用いて表現されることのままある「平成流」の源流として同訪問を位置づけるとともに、天皇が自身を「弱い」立場として自己表象する在り方の一源流としても位置付け、現代における天皇(制)の在り方についての考察を行った。そして③では戦後以降の天皇(制)をめぐるオカルティックな想像力の展開について〈正統〉と〈神聖〉という戦前天皇制における重要キーワードの運用に注目して検討を行った。 これらによって特に戦後の天皇(制)とポップカルチャーを問題化するための準備作業を整えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下の計画であったがコロナ禍によって計画に大幅な変更があった。 ①前提として戦後の全国メディアにおける天皇・皇族・皇室表象を明らかにするために主要新聞、総合雑誌、女性雑誌、週刊誌を中心に天皇・皇族・関連記事を調査する。これらのメディアについては電子版による検索が可能なものもあるが、データベースによって検索の基準が曖昧であるところから電子的な検索には頼らず、目視による調査を行い、目録化した上で書誌データを公開する。なお、週刊誌についてはメディアにおける天皇制を考える際には必須のものであるにもかかわらず、図書館での所蔵の少ないものが多く、日本でも有数の雑誌の所蔵を誇る北海道立図書館での調査を予定している。 ②マンガ資料については、明治大学現代マンガ図書館、米沢嘉博記念図書館、京都国際マンガミュージアムで、調査を行い、また大衆文芸およびポップカルチャー雑誌に関して、大宅壮一文庫、日本近代文学館および国立国会図書館を中心として調査を行い、天皇・皇族・皇室表象の現れたテクストの複写を行い、不足分については適宜古書店を通じて購入する。これによって得られた書誌的データは戦後天皇・皇族・皇室表象として目録化する。 ③特に戦後以降の天皇制表象研究について再度精査を行い、先行論の動向を把握する。 以上のうち、出張による調査は不可能となったが、その代わり分析対象となるテクストは多く入手することが出来、それらの結果をもととして充実した研究成果を得ることが出来た。そのため、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はコロナウィルス感染症の流行状況を見極め、可能ならば2020年度に行うことの叶わなかった北海道立図書館、明治大学現代マンガ図書館、米沢嘉博記念図書館、京都国際マンガミュージアム、大宅壮一文庫、日本近代文学館および国立国会図書館における資料調査を行う。また、2020年度中に収集した資料の分析を進め、アニメや映画などの映像資料についても、主に国立映画アーカイブを利用し、閲覧する。これも書誌的データは戦後天皇・皇族・皇室表象として目録化しWebページで公開する。そして、コンテンツ文化史研究会、表象文化論学会、マス・コミュニケーション学会、メディア史研究会などでの中間的な研究成果報告を行い、議論の中で研究のシェイプアップを図る。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍による出張の困難があったためその分を物品費に回したため、残額が発生した。2021年度はその分調査にかかる旅費を増加する予定である。
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Research Products
(5 results)