2022 Fiscal Year Research-status Report
「自然の醜さ」とは何か?:不快の感情に基づく美学的解明
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20K12844
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
高木 駿 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (90843863)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 美学 / カント哲学 / 醜さ / 崇高 / 自然 / 価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、I. カントの『判断力批判』(1790)における不快の感情の類型に基づき、自然がもたらす不快の内で崇高を引き起こす不快の感情を特定し、その不快の感情に対応する「自然の醜さ」を解明することを試みた。まずは、『判断力批判』の「崇高の分析論」の読解と考察を通じて、崇高と関わる不快の感情が生じるあり方を明らかにした。ここでは、その不快の感情に応じた「自然の醜さ」として、崇高を引き起こす醜さをテーマとした。つぎに、崇高と関わる「自然の醜さ」と道徳概念および道徳的概念との関係を明らかにした。それらの研究遂行を通じて、例えば、崇高、醜さ、自然に関わる研究の中では、尊厳概念やフェミニズム、ジェンダーといった火急の問題的事柄に関わる問題設定・提起を行うことで、当初計画していたよりもより広い射程を研究に確保することに成功した。さらに、醜い自然を考察する研究について言えば、18世紀のイギリス式庭園をモデルとして、グロテスクという概念との関係から自然物・現象を考察し、主観の構想力(想像力)を過剰に刺激する自然のあり方を明らかにするとともに、それらの醜い自然の中に崇高にいたるものと、崇高にいたらないものという区別を解明した。いずれについても、客観的な業績を積み上げることができ、研究成果も、所属先の紀要や所属学会の学術雑誌で公開することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた目的を、客観的な研究成果を持って遂行することができた。さらに、ジェンダー概念を通路として美学そのものの問題へ踏み込むこともでき、今後の広がりを確保することにも成功したと考える。その意味で、当初予定していた計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、これまでに解明した種々の自然と不快・醜さとの対応関係を示すと共に、別種の醜さどうしの関係性を明らかにすることで、「自然の醜さ」に関する美学理論を体系化する。まずは、どのタイプの自然にどの種類の不快・醜さが可能であるのか、また適合するのかを検討し、自然と不快・醜さとの対応関係を表示したインデックスを作成する。つぎに、不快一般のあり方の基軸となっている構想力の働き、および、構想力と他の能力(感官、悟性、理性)との連関に着目することで、別種の醜さどうしであっても関係するのか否か、関係する場合には、そこに連続性、段階性、階級性が存在するのか否かを明らかにする。
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Causes of Carryover |
端数のため生じた金額であり、翌年度の使用計画への影響はないと考える。
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