2020 Fiscal Year Research-status Report
近世中期の芭蕉発句注釈に見る蕉風俳諧受容に関する研究
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20K12917
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
服部 温子 奈良女子大学, 大学院人間文化総合科学研究科, 博士研究員 (60790194)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蕉風俳諧 / 芭蕉発句 / 蓼太 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世中期に関東を中心に絶大な支持を集めた俳諧宗匠である蓼太が著した芭蕉発句の注釈書『芭蕉句解』と、その『芭蕉句解』を増補・訂正するかたちで蓼太の弟子である荘丹が著した注釈書『芭蕉句解参考』の分析を通して、近世期における蕉風俳諧受容の一端を明らかにすることを目的としている。
令和2年度は『芭蕉句解』の宝暦9年(1759)版と天保14年(1843)版で本文校異を行った。原本調査がかなわず、複写を用いた比較となったため、一部に判読できない箇所があったものの、重複部分の本文については概ね異同はないことを明らかにできた。一方で、蓼太の死後に出版された天保版で追加された発句は全76句だが、その選定者および選定理由までは明らかにできていない。これについては、令和3年度以降の課題としたい。 本文校異作業に加えて、『芭蕉句解』が採用する句形が、先行のどの俳書によっているか確認する作業も行った。大部分が当時すでに出版されていた芭蕉発句集である『泊船集』(元禄11年=1698)や『芭蕉句選』(元文4年=1739)によっているが、一部に写本でしか伝わらない句形や、現存の俳書には見えない句形も収録していることが明らかになった。これら典拠不明の句形については、令和3年度以降、蓼太の他の著作にもあたり考察していきたい。
なお、『芭蕉句解』は、日本古典籍総合目録によれば、ほかに天保8年(1837)版もあるが、この版については複写入手もかなわなかったため、これについても令和3年度以降の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に予定していた原本調査はかなわなかったものの、原本にあたらずともできる作業は確実に進めることができた。ただし、原本にあたっていないため調査の精度が不十分であること、学会誌に成果を発表するところまでには到らなかったことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、『芭蕉句解』の注釈内容について考察を進めていく予定である。あわせて、可能であれば、本文校異作業において複写では判読できなかった箇所について、原本調査を行い明らかにしたい。令和3年度には、学会誌に何らかの成果を発表できるよう努力する。
さらに、令和3年度後半~令和4年度は、『芭蕉句解参考』についても、初版と後刷版で本文校異作業を行ったうえで、内容について考察を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
令和2年度に原本調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症流行の影響によりかなわなかったため、使い切れずに残してしまった。原本調査は、令和3年度以降に必ず行う予定である。
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