2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K12922
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
板野 みずえ 群馬県立女子大学, 文学部, 講師 (70867001)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 新古今和歌集 / 叙景表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新古今時代から京極派和歌の時代にかけての叙景表現の変遷を辿るための基本的な作業として、新古今時代の和歌の注釈の再検討を行った。 「景」という概念は「心」という概念と対になりやすく、先行研究でも「景」は「心」の問題とともに扱われてきた。そこで、両者の関係性を相対化するために「心」という概念についてまずは整理と分析を行った。この「心」という概念は、一方ではまた「身」という概念と対応させられることも多いため、新古今時代の和歌において「心」、そしてまた「身」がどのように位置づけられているかということをそれぞれ明らかにしようと考えた。 具体的な作業としては、古注以来、明確な通釈が定まっているとは言い難い『新古今和歌集』秋上に収められた慈円の「身にとまる思ひを荻の上葉にてこのごろかなし夕暮の空」という歌を端緒に、同じく「身」を詠む新古今歌人たちの和歌を取り上げ、それ以前の「身」の詠作史を辿りつつ、「身」の和歌が有する構造とその背後に伺われる叙景意識を分析していった。これについては論文化し、投稿に向けて準備を進めている。加えて、新古今時代の本歌取りの概念についても改めて整理し、定義した上で分析を加えた。 加えて、この問題に取り組む際に参照した京極派の和歌と、その和歌が詠まれた歌合(正安二年~嘉元二年の間に開催されたとおぼしい三首歌合)の注釈を作成する作業も行った。これも完成させて論文として投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルスの流行により、図書館や資料館への行き来が制限され資料調査が困難になったことに加え、コロナウイルスの流行への対応で例年以上に大学業務に時間を割かざるを得なくなったため、研究にあてられる資料・時間ともに激減したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究に必要な資料も少しずつ手に入るようになってきたため、基本的には当初の予定通り今年度の成果を踏まえながら新古今時代以後の和歌における叙景表現の分析へと調査範囲を広げていく。 ただし、その前に今年度の注釈作業の蓄積によって得られた新古今時代の叙景表現の特質について、論文化し投稿をする。その上で、研究対象を『新勅撰和歌集』以降の勅撰集へと広げ、そこに見られる叙景表現と、そこに見られる叙景意識を分析していく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの流行により、出席予定だった学会がオンライン開催になったり、資料調査に向かう予定であった図書館・資料館に立ち入りができなくなったりしたことにより、旅費を使う機会がなくなったため。流行の状況次第によっては使用できるようになるかもしれないので様子を見ながら、物品費に振り替えることなどせず、そのまま旅費として確保しておいたが、結局状況が改善せず旅費として使用することはできなかった。 次年度もコロナウイルス流行の状況が改善しない場合は、物品の購入にあてる予定である。
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