2022 Fiscal Year Research-status Report
ムスヒ神・ムスビ神に関わる日本古代霊魂信仰の体系的な理解とその具体相の研究
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20K12926
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
那波 陽香 (森陽香) 目白大学, 外国語学部, 専任講師 (00845175)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 他界観 / 万葉集 / 信仰 / 神観念 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研費取得最終年度(となる予定だったが、現在1年間の延長申請させていただいた)として、大きく二つの取り組みを行った。 一つは、「国語と国文学」に掲載となった萬葉集における他界観念の研究である。万葉集巻十六の末尾に載る歌を取り上げた論考で、その歌は比較的よく知られた歌であるものの、難解で従来あまり研究が進んでいなかった。本論はそのような歌について、古代の日本人がどのような他界観を持っていたか、文学的、また民俗学的な角度から問い直し、その特徴を明らかにしたものである。具体的には、天と海と、二つの他界観についてそれぞれ取り上げた。天についてはこの地上と天上世界とがどのように信仰意識の上でかかわりを持ち得たのか、という観点を論じた。海の他界観については、上代文学作品に明確に記述された事例が少ないため、歌一首を通してではあるが、死後の行方としての海彼という考え方が上代にも成立していた可能性を、あらためて問い直した。「国語と国文学」は、現在、日本文学全体を見渡す学術誌として高い権威のある雑誌であるので、それに拙論を掲載できたことは、今後の学会活動・研究活動の幅を広げてゆくうえでも、意義のあることであったと考えている。 もう一つは、その科研費三年間の研究の集成として、古代の日本人が「神代」(神様の時代)をどのように認識し自らの生活に位置付けていたか、という観点からの研究で、こちらは現在も進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要欄に記したように、2022年度は二つの取り組みを行ったが、そのうち二つ目の取り組みが2022年度中に学会発表・成稿までたどりつけなかった。この取り組みは、「神代」に対する古代の人々の意識やその変容を明らかにしようとするものであるが、『萬葉集』を改めて精査したところ、「神代」というキーワードに関連する萬葉歌は非常に著名な歌が多く、先行研究が膨大(柿本人麻呂・山部赤人・笠金村・大伴家持など主要な萬葉歌人の研究史をほぼ網羅的に見直さなければならない)であることが明らかとなったためである。そこで1年間の研究期間延長をさせていただいたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
述べたように、この研究課題を2022年度中に終えることができなかったが、2023年度の前半には学会(上代文学会を予定する)での口頭研究発表を予定し、準備を進めているところであるので、このまま進めば、7月ごろ口頭発表、2023年度中に学会誌へ論文投稿、という形で、研究のまとめを世に問うことができるはずである。
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Research Products
(1 results)