2022 Fiscal Year Research-status Report
ライトノベルから見た現代日本の「文学」の変容/再編に関する研究
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20K12927
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
山中 智省 目白大学, 人間学部, 専任講師 (10742851)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ライトノベル / 出版メディア / メディア史 / 文庫 / 小説投稿サイト / メディアミックス / 聖地巡礼 / コンテンツツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度に実施した研究は、①確立期(1990~2000年代)に関する調査・分析、②成熟・拡大期(2010年代)以降に関する調査・分析、③これまでの研究成果の発表、の3点である。 ①では、コンテンツ文化史学会2021年度大会における個人研究発表の成果をもとに、電撃文庫の特徴等をめぐる追加の資料調査に取り組んだ。そして、電撃文庫が公募新人賞をはじめとする様々な方策を駆使して作家・作品の多様性を追求した結果、1990年代後半から大きな躍進を遂げ、「出版メディアとしてのライトノベル」の特質をより鮮明にするとともに、「面白ければなんでもあり」というライトノベルの境地を強固に確立した様子を明らかにした。また、②とも連携しつつ、「ライト文芸」や「新文芸」などと呼称される新たな「ライトノベル的なもの」の普及と拡大、さらには、小説投稿サイトの登場と隆盛をめぐる様相に迫っている。 ②では、前述の「ライトノベル的なもの」や小説投稿サイトの諸動向に加え、ライトノベルの/とメディアミックスの現状を把握すべく、関連作品の収集・分析のほか、現役の編集者1名、作家1名へのインタビューを行った。また、裕夢(著)raemz(イラスト)『千歳くんはラムネ瓶のなか』(ガガガ文庫、2019年~)と福井県福井市のコラボ企画「チラムネ福井コラボ」(2021年~)を契機に、近年注目を集め始めたライトノベルの聖地巡礼/コンテンツツーリズムの動向把握を目的に、福井県福井市における現地調査と、コラボ企画関係者2名へのインタビューを実施している。 ③では、①における電撃文庫の研究成果を論文化し、『目白大学人文学研究』第19号に投稿した。②については、「チラムネ福井コラボ」をめぐる調査結果をもとに、コンテンツ文化史学会2022年度例会にて個人研究発表を行ったほか、日本出版学会2022年度秋季研究発表会にてワークショップを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐる規制緩和を受けて、新規資料の収集・分析やインタビュー調査(年度内に4件実施)を順調に進めることが叶い、これまでの遅れについては徐々に解消しつつある。研究成果の発表については、個々の時期・事例を踏まえた個人研究発表やワークショップの実施、論文投稿が順調に進んだ一方で、COVID-19の影響を受けた進捗の遅れにより、萌芽・誕生期(1970~80年代)、確立期(1990~2000年代)、成熟・拡大期(2010年代)の全期間を交えた総括と、ライトノベルから見た「文学」の変容/再編の具体相に関する考察は、まだ着手中の状態にある。したがって、本来は2022年度に取り組む計画だった研究のまとめが課題として残されていることから、現在までの進捗状況は「やや遅れている」と判断される。なお、進捗の遅れをリカバリーするための時間確保と本研究の目的完遂のため、科研費補助事業期間の延長申請をすでに行い、1年間の延長承認を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は前述の通り、萌芽・誕生期(1970~80年代)、確立期(1990~2000年代)、成熟・拡大期(2010年代)の全期間を交えた総括と、ライトノベルから見た「文学」の変容/再編の具体相に関する考察を念頭に、研究活動を進めていく。このうち、特に萌芽・誕生期から確立期に関しては、研究成果を博士論文としてまとめ、提出する予定である。また前年度に引き続き、日本出版学会、日本近代文学会、コンテンツ文化史学会など、所属する学会での報告を予定している。また、大学紀要や学会誌への投稿を通した研究成果の論文化に加え、目白大学新宿図書館などと連携した企画展示を開催することで、より広い社会に研究を公開・還元していくことを目指していく。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、研究の進捗にやや遅れが生じていることから、新規資料の収集費用、研究成果の発表を目的とした学会への参加費用(現地までの交通費と宿泊費)などに未使用額が生じている。2023年度は研究のさらなる高度化と全体の総括のため、予算の残額については引き続き、資料収集費用、学科参加費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)