2021 Fiscal Year Research-status Report
The Jesuit Japan Letters: From European Prints to Eyewitness Accounts
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20K12929
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
シュウェマー パトリック 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (30802946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キリシタン / ピカレスク / 元禄文学 / イエズス会 / スペイン黄金世紀 / コロンブス交換 / 薬物貿易 / 騎士物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究会に新しいメンバーを加え、資料を共有し、その目録化、翻刻、校訂、英訳、和訳、を進め、バーチャルで研究会を開催した。代表者はキリシタン文化研究会大会にて招待公演を行い、キリシタン聖人伝の原典となったヨーロッパ諸語の版本聖人伝集がどれであったかという新発見を表明した。それに基づき、原典にはなく日本語版にしかないという箇所を同定し、日本側の影響源を特定することができた。さらに、先行研究がフロイス『日本史』やエヴォラ版『日本報告集』という2次資料に拠ったのに対し、キリシタン聖人伝の成立過程が垣間見えるイエズス会日本報告を取り上げた。このようにして本研究の副題の通り「ヨーロッパの版本資料から目撃者の写本へ」情報源を取り替えることにより、聖人伝の和訳が以前考えられていたのより遅かったということ、そして堺商人の日比谷家も中国人家政婦もその作業に関与したという可能性を指摘することができた。この研究は査読を経て学会誌『キリシタン文化』に2回に分けて掲載されることとなったため、論文として書き上げた。なお、シンポジウム「東西中世における修道院・寺社の書物文化──制作・教育・世界観の変容」における招聘公演として、排耶物語に見られる聖人の俗伝、イベリア世界征服の精神が凝縮している騎士物語の引用、意外にも事実であった薬物貿易の告発にヒントを得て、宗門改と異端審問、ピカレスク小説と元禄文学、イエズス会の開祖伝とコロンブス交換という「近世化」を日西の現象として捉え直した。スペイン黄金世紀のこういった知識をイエズス会日本報告から得られた資料に照らし合わせて、今後の研究において新次元に持っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
思ったほどフィリピン、インド、メキシコなど、スペイン系托鉢修道会の未開拓資料群に着手することは当然コロナ禍でできなかったが、そのための予算を貯めており、本プロジェクトを延長申請する予定である。一方、資料の共有、研究会は遠隔でも行うことができた。最も、無期雇用の決まっておらず、代表者以外研究会のモンバーのほとんどが多国間で頻繁に移動を余儀なくされているため、それも本来はより高速に進められたはずである。とはいえ、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究会メンバーの異動が落ち着き次第、フロイスの彼方へ掘り下げて深層から、イエズス会だけではなく托鉢修道会の日本報告を翻刻、校訂、英訳、和訳して出版物に仕上げるという加速させていく。本プロジェクトを延長することができれば更なる資料調査出張、国際学会の開催もおこなっていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、調査出張も国際大会も行うことができなかったが、これらの目的が復旧後果たせるようにプロジェクト期間延長申請をする予定である。すると貯めておいた科研費を旅費、研究会費用、出版費用などに使う予定である。
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Research Products
(4 results)